« [西蔵日報]高等教育の顕著な成果 | Main | 「天空への回廊」「最遊記」 »

2004.09.09

「風の王国 天の玉座」

31416542.jpg 8月30日付で書いた「風の王国」の続編。
 詳しくは→ Amazon bk1
 政略結婚のはずだけど初恋が実り、吐蕃に暖かく迎えられたヒロインは、晴れて吐蕃の若王の正妻となる。前妻の息子にも慕われ、穏やかな新生活が始まる……はずだったが、何者かが飲み物に毒を! いったい誰が何のために、そして命を狙われているのは果たして……?
 ――というストーリー。
 舞台はようやくチベット圏に入り、新婚の2人はツァシュー(ツァワロン渓谷)での新生活。父王ソンツェン・ガンポが居を構えるヤルルン渓谷のチョンギェ(その後ラサに遷都)よりずっと東、現在の地図でいうと雲南省との省境付近、カワ・カブ(梅里雪山)から西側のメコン川源流とサルウィン川源流の間に広がる肥沃な乾燥地域での新婚生活です。うわー、私は麗江の北「虎跳峡」までしか行ってないけど(当時デチェンは非解放だった)、想像しただけでも素敵な地域。行ってみたいなあ…。
 物語も、盛りだくさんの人物が顔見せ的に登場した1作目から落ち着いて、それぞれのキャラクターが生き生きと……してるのは確かなんだけど、ううむ、なんだかなあ。
 チベットの自然と未知の大国「吐蕃」、という感じはあまりしません。儀式の準備進行とともに謎が深まっていく筋運びは宮中ミステリっぽくて面白いんだけど、そしてこの作者はそういうのが得意みたいでとても生き生き描写しているんだけど、なんか「スタジオで撮影されたドラマを見ているような感じ」なんだよなあ。若王リジム(今分かった、リ<ri/山、峠>+シミ<simi/猫>でリジム=山猫なのか~)も"議会"には出るわ政治はするわ、1作目の野性的な魅力はどこへ……(ううっ)。いやいいんだけど。宮廷モノを書きたいなら、秦とか唐とか随とか宋とか、とにかく漢民族の王朝を舞台にしたほうがネタも山盛りだし陰謀深慮ふんぷんだし腹黒キャラにも困らないしで、わざわざ西戎北狄をモチーフに持ってくることもなかったんじゃないのかしら。チベットがもったいない。
 (以下ちょっとだけしょーもないネタバレを含みます)
 え~、物語のクライマックスは『大祭』の行なわれるツァワロンの『西の峰』山頂での戦闘アクション。『西の峰』てのがどの峰かは明言されてないけど、そのへんの丘とかじゃなくてツァワロン渓谷周辺のしっかりした山なんだったら、どれ登っても間違いなく6500mくらいはありそうで、山頂で跳んだり跳ねたりチャンバラしたりしてる場合じゃないよーな、気はする(笑)。
 えーとそれから作中に登場する『赭面』。ラストでリジムが「あれ、止めるわ」みたいなことを言ってます。
 あれ(赭面)はちゃんと文献に残る吐蕃の風俗習慣で、「文成公主が廃止させた」と記録されているんですねぇ。1作目に「赭面」という字句が出てきた時に(ライトノベルっぽくない語彙ですよね)、ヒロインが廃止させるんかな、と先が楽しみだったのでした。物語では「○○○○が嫌がっていたから、せめてもの弔いに」(リジム)とアレンジ。○○○○が嫌がっていた描写があんまりなかったので伏線が機能せず、知らない人には多少の唐突感があるかもですが、作者の史実へのこだわりが感じられるようで、芸の細かいことをするな~、と思いました。

|

« [西蔵日報]高等教育の顕著な成果 | Main | 「天空への回廊」「最遊記」 »

Comments

Post a comment



(Not displayed with comment.)


Comments are moderated, and will not appear on this weblog until the author has approved them.



TrackBack

TrackBack URL for this entry:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/22378/1392090

Listed below are links to weblogs that reference 「風の王国 天の玉座」:

« [西蔵日報]高等教育の顕著な成果 | Main | 「天空への回廊」「最遊記」 »