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2004.10.26

プロジェクトX「アジアハイウェー ジャングルの死闘」

 NHK「プロジェクトX」で「アジアハイウェー ジャングルの死闘」
 海外受注に活路を賭けた中堅ゼネコンが国連のコンペでタイ北部の道路建設を入札し、熱帯林を切り開いて道路を建設する話。プロジェクトXって番組はあまり好きじゃなくて見ないようにしている(例えば2002年10月の日記)んですが、なぜか私がたまたま見てしまう回に限って、海外、それもアジアものが多いので、つい最後まで付き合っちゃうんだよね……(何故だ?)。
 これも、「コブラの出るジャングルの熱帯林を人力で切り開いた」なんて描写があると、あ~あ、村とと村をつないでいくのではなく大都市と大都市を最短距離でむりやり結ぶ、現地の人の足にはならない道路を作っちゃってるんだろーなー、とか、「指示通り働かないタイ人労働者との軋轢」なんて出てくると、うえ~、ミャンマー国境なんて山岳民族の住む地域で、タイ語自体通じるかどうかも怪しいのに、日本人がタイ語学ぶこともなく現地語できる通訳をつけることもなく、日本式のやり方をゴリゴリ押し通して溝を広げてたのかも知れないよなあ、などと、想像はつい悪い方へ悪い方へ。きれい事しか放送されない、と分かっているから余計に。
 ドキュメントは、難航していた道路建設がある時、日本に戻らず現地に残った元日本兵がふらりと現場に現れ、調整役として働くことを申し出たことでがらりと状況が変化した――と進む。今も健在で現地に住む藤田松吉さんが、取材に応えて当時を振り返り、「ひとり生き残り、仲間の屍を置いて日本へは帰れなかった。供養のためここに残った」「日本人が道路を作っていると聞いて行ってみた」「タイ人はプライドの高い人たち。他の人の前で一方的に怒鳴りつけるなど自尊心を傷つけることをしては信頼を得られない。現地の人の気持ちを知らないで一緒に仕事をできないだろう。自分が手伝うしかないかと思った」「それから、タイ人の中からリーダーを選び、タイ人に責任を持たせるように言った」……と、訥々と話す(大意。メモを取っていた訳じゃないので不正確だけど、だいたいこんな内容のことを言っていたと思う)。
 待てよ、なんだよそれ。
 初の海外受注だか中堅土建屋の起死回生策だか知らないけど、本当に凄いのはこの「藤田松吉さん」という人の人生ではないのか。焦点を当てるべきはこの人の選んだ人生で、学ぶべきはこの人のタイとタイ人を見つめる視線じゃないんですか。
 少なくとも私は、熱くてコンクリートがすぐに固まってダマダマになっちゃった、とかよりも、この藤田松吉さんの話をもっと聞きたかったぞ。ODAはこんな仕組みになってますみたいな話よりも、日本の戦後復興を遠くタイ国境で見守りながら生きてきた人の視線から見たアジアハイウエー建設、そして1人きりで続けてきた弔い、のほうがずっとずっと"プロジェクト"だよ……。
  ◇
 この藤田さん、決して「知られざる存在」「黙して語らずな方」ではなく、1973年には今村昇平監督がテレビドキュメンタリー「藤田上等兵三十三年ぶりの帰還 無法松故郷に帰る」を製作、その後も新聞記事などで紹介されているようです。だから「プロジェクトX」を見て初めて知って衝撃を受けてる私が単にモノ知らずなだけなのかも知れないけど。
 それにしても、板張りの簡素な部屋(おそらく自宅)で、藤田さんが、深い皺の刻み込まれた顔をややうつむかせ、厳しい表情をあまり崩さず、訥々と当時を語ったVTRの後、画面がスタジオに戻り、スポットライトを浴びた退職した土建屋さんたちに「本当に大変だったんですね」とねぎらうアナウンサーの言葉の、なんだかそらぞらしかったこと。藤田さんにとっては、すべてがあの日のまま、本質的には何も変わらずに今も続いているんじゃんねえ。

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