« ジンガロの「ルンタ」行きました! | Main | ジンガロの「ルンタ」雑感(ねたばれなし) »

2005.05.04

ジンガロの「ルンタ」感想(ねたばれあり)

 騎馬オペラ「ジンガロ」感想です。舞台芸術にもフランス芸術にもまったく縁がなく、馬が好きという訳でもなく、ただ「チベットが出てくるらしい」というちょっとズレた興味で見に行ったので、感想もズレまくってることをご承知おき下さい。また、ねたばれ(内容の詳細についての言及)を含みます。上演は5月8日までだし、いいかな~、と(すいません)。ねたばれ以外の部分は前後の日付のテキストをご覧下さい。
  ◇
 さて開演10分前、「11列…11列…あれ?」。最後列が10から始まってて席がないー、と思ったら、さらに後ろの通路と壁にはさまれた三角形のデッドスペースに椅子が2個! 当日券出すためにムリヤリ椅子置きました、という感じで主催者さんに感謝(笑)。壁から身を乗り出して右側を見ると、僧侶の読経するスペースが遠くに見えました。
patha (←画像はDVDからちょろっともらってみたり)照明を落とした場内は、僧侶の座る席を覆うようにパタ(チベットのタシタゲ<八吉祥>のひとつで「終わりのない紐」。無限、永遠、調和などを象徴する)が染め抜かれた幕が下がり、赤土むき出しの丸いステージの上部にはチベットのお寺の柱に巻かれる飾り布のような装飾布がぴらぴらと下がり、「おっチベットっぽい!」とそれだけで嬉しくなる単純な私。
 低音の読経が響くなか、円形の蚊帳のような幕の周囲を何人もの男性がキャンチャ(五体投地)で回っています。宗教的行為が単なるモチーフとして扱われるのがちょっと気になって、あれはあの幕をチョルテン(仏塔)となぞらえてることになるんだろうか、それともいまお坊さんが詠んでる読経に対して礼拝してるってことになるんだろうか、などくだらないことを考えたり。読経も、高野山の声明だって「仏教音楽」としてCD出てるんだしダラムサラ行けば“チャントもの”があふれてるわけで堅苦しく考えることはないよなーんーでもーなどと思っていたら、jingaro02僧侶の座る席の上方にちゃあんとタンカ(仏画※)が掛かっていました。おーそーじゃなくちゃなあ、本職の坊さんだもんな、と一人納得。(※私の席からは遠くて何なのかは分かんなかったんですが、DVDだと白緑一対のドルマ<ターラー菩薩>のようでした)
 「難解だ」とか「訳が分からない」という前評判も聞いてたんですが、その通り、ストーリーもセリフもなくて、「自由に解釈して下さい」というアートパフォーマンス。ゆったりとしたリズムの眠くなる心地よい読経が響くなか、公演は淡々と進行。特に私は最後列ですり鉢の一番フチにいたので、よくもわるくも馬の臭いや足音や小さな鼻息までは聞こえてこず、身じろぎしない満席の観客も含め、すべてが夢の中のような、現実味のない不思議な感覚を味わっていました。
jingaro01 (←画像は公式サイトからもらいました)僧衣のような服を着た男性がステップを踏みます。コスプレなのかほんとに僧侶なのか気になったり、しげしげとみると僧衣とはちょっと違う服のような気もしたり。髪長いし……ンガッパ(行者)?(笑)
 それにしても、「拍手をしないで下さい」というのはなかなか難しいもの。舞台とか演技とかって「いいぞ」と感じたタイミングで拍手や歓声を送ることで、1対多数であっても一体感を得たり客席同士がつながったりするものだと思うんだけど、それができないから、役者がコミカルな動きをしても客席はシーンと静まりかえって咳払い一つない。見ていても、今のが笑う所なのか感心する所なのかピンとこないし、最後まで置いてかれてる感じがしてました。
jingaro03 (画像はDVDからです)へーと思ったのは、僧侶が途中で帽子を被り替えたこと。最初はゲルク派のお寺でよく見かけるモヒカンっぽいデザインの帽子(「トサカ」とか「ダスキンのモップ」とかこっそり勝手に形容してたり)をかぶってて、途中それを脱いで、jingaro04別の一幕では、丸い黒いとんがり帽子の回りをチベットの真言の彫り込まれた金属板でぐるりと囲んだちょっと偉そうな帽子に替えてました。よく知らないけど、きっと詠むお経に合わせて被るべき帽子を被ってるんだろうなあ。芸が細かい。
jingaro08 全身を青く塗った半裸の女性が長髪を振り乱しロバに乗って出てくる一幕は、最初「シヴァ? (…は男だからその奥さん?)」と思ったんだけど、なんだっけチベットの青い女神青い女神、とさちらもさんの観劇記にも書いてあったことを思い出し、チベットの守護母神パンデン・ラモかぁ、と。元設定が「馬に乗ってる」なのに、どうしてロバなんでしょ(*1)。日本では吉祥天にあたる神様です。演技(入場→男性2人追い出す→ロバ寝る→女神寝る→ロバ起きる→走り回る→出て行く)が何を表現してるのかとかはサッパリ分からないので考えるのをやめました。ロバ君起きあがる時に何度も寝返り打って体中土まみれになってたな。
jingaro09 擬人化の後はチベットの護法神か守護尊そのもの(の、ちょっと装飾過多でゴージャスなバージョン?)も登場。チャムを馬と一緒にやってみました、って感じかな? さっきのパンデン・ラモ(画像はタンカの通販サイトから借りました。それにしても顔怖い)なのか、馬つながりで馬頭観音なのか。詳しい人にいつか聞いてみよう。
 その他、狂言回しのように何度も登場してユニークな動きをしてくれるチティ・パティなど、チベット風の登場人物数えきれず。客席の後方から役者が舞台へ降り立ち、洋服を脱ぎすて、遊牧民となるシーンでも、チベット服っぽい意匠が使われてました(でも私のブロックの前にいた兄さん! チベット風にチュバを片袖脱ぎにしてタトゥーの入ったたくましい上腕を見せてくれてましたが、それ左肩です! 逆!)。1人1人が馬芸を披露する場面では、チベットのホースレース定番のカター拾い(カターじゃなく帽子でしたが)もありました!
 ところで後半盛り上がった場面。チティ・パティに扮した演者が走る馬と一緒に雑伎団ばりのアクロバティックな演技をする一幕ではアボリジニの楽器デジュリドゥが舞台上で演奏されていたし、男たちが洋服を脱ぎ捨てる時もインドの民族打楽器タブラーのリズムが刻まれていて、チベットじゃなくなってました。やっぱ読経じゃ盛り上がんねえ、ってことでしょーか(笑)。
jingaro05 個人的に何より印象に残ったのは、実は、「チベット風の芸術」よりも、カムのチュバに身を包んだチベット人歌手が、ステップを踏みながら朗々と歌い上げた……つまりホンモノの1曲でした(ごめんなさい)。喉を鳴らし時に声を裏返すチベット民謡がすばらしかった。
 後でパンフレットを見たら、この人はテンジン・クンシャップというパリ在住の亡命チベタンで、既にプロ歌手として活動している人らしいです。「今回唯一バルタバスがキャスティングをして決めたプロのダンサーだ。当初ダンサーとして採用されたもののバルタバスにその歌唱力を買われ、急遽、フィナーレでその声を披露することになった」(公式パンフ)。キャスティングをした、という日本語がよく分からないんだけど、役が先にあってジンガロ劇団以外の役者にオファーをかけた、という意味でいいんでしょうか。
 余談ですが公式パンフ、「ルンタとはチベット語で『魔よけと祈りの旗』を意味する」とかスゴイ記述がありやす。(注・『魔よけと祈りの旗』はルンタや教文、菩薩などを描いた旗「タルチョ」のことか。ルンタを印刷して峠でまく紙も「ルンタ」だから、まったく違ってるわけでもないんだろうけど)
0503-07 閑話休題。チベットの歌の後、遊牧民たちが床に寝転がった上にドーム型の幕が下り、それをスクリーンにして浮かび上がったのはポタラ宮殿(「あっポタラ」とつぶやいたら前の人に睨まれてしまったごめんなさい)。眠りについて夢を見ている、という設定なんでしょうか。スクリーンにはさらに、強い風が吹きすさぶ効果音に合わせ、チベットの草原、ヤクを追う女性たち、馬に乗る男たち、大タンカ開帳で斜面に布を転がす男たち、タンカに向け焚かれるサン、タンカに向け投げ上げられるルンタ……などが次々に映し出され、映像の中で投げ上げられたルンタ(のつもりだろう白い紙切れ)が幕から降ってくる――という演出でエンディングを迎えるのでした。
 ええーっ最後の最後で映像かよ、とこれにはビックリ。チベットのようでチベットではない架空の幻想世界を堪能してるつもりだったのに、リアルなチベットを映してどう解釈しろっての? 馬と人のパフォーマンスで「チベット」を表現し尽くす舞台に挑戦してるんだと思ったのに、映像使ったらミもフタもないじゃないですか?? なんかそのへんはよく分からないまま、とりあえず満足して帰ってきました。
  ◇
(*1 コメント欄でご指摘いただきました。「馬に乗っている」のが私の思い込みで、ロバに乗っているのが正しい設定だそうです。すいません。/5月8日追記)

|

« ジンガロの「ルンタ」行きました! | Main | ジンガロの「ルンタ」雑感(ねたばれなし) »

Comments

dpal ldan lhamoが乗っているのはrkyang(チベットノロバ)ですので、ロバで問題ありません。
ディジュリドゥはdung chen(チベットホルン)と音色が似ているので、その代用かも知れませんね。
以前、とあるラップグループがdung chenをベース音の一部に使ってるのを見てびっくりしたことがあります。

Posted by: orubhatra | 2005.05.07 at 09:49 PM

>orubhatra様
パンデン・ラモがまたがってるのって馬じゃなくてキャンなんですか! まったく知りませんでした(恥)。「騎馬オペラ」で何であのシーンだけロバ、と疑問だったんですが、深いなあ。勉強になりました、ありがとうございます。
ドゥンは(数mもあるような大きなものではなく地の底から響くような音ではありませんでしたが)ジンガロの僧侶の読経でも使われてまして、ディジュリドゥは代わりっていうより連続して音が長く出せるからかなあと思いました(鼻から息吸って口から吐くのを同時にやって切れ目なく音を出すんですよね>ディジュリドゥ)。元々ヒッピーに人気のポピュラーな民族楽器ではありましたが、近年ダラムサラ(の特に長期滞在外国人の間)でも流行中(?)で、一昨年は隣のゲストハウスから毎晩聞こえてたし、昨年行ったときも持ち歩いてる旅行者を2人も見かけました。何なんだ。
そういえばバリ島でも、ウブドの土産物街にディジュリドゥ専門ショップ(オーダーで絵を描いてくれる)があって驚きました。なんぼインドネシアがオーストラリアと近いったって…。あー話がそれました、すいません。
ドゥンチェンを使ってるラップグループって「ビースティ・ボーイズ」とかでしょうか? 以前チベット人笛奏者のガワン・ケチョンのステージを聴いたとき、小さい横笛大きい横笛いろいろ持ちかえ(そういやディジュリドゥも演奏してたような?)、そのうちギャリンやドゥンチェンも出てきて、激しく身をよじりながらノリノリで演奏していて「すげー」と思った記憶があります。

Posted by: うらるんた | 2005.05.08 at 02:46 AM

こんにちは。トラバありがとうございました!
私も、パンデンラモだ♪と喜んだものの、寝転んでるロバくんの回りで踊りだしたあたりから意味が判らなくなり、頭は「?」モード(笑)可愛い顔して実は一筋縄でいかないロバくんでパフォーマンスするには、コレで精一杯かな~?などと、自分勝手な解釈でむりやり納得しました。
パンフレットの感想もうらるんたさんと同感ですね~。パンフよりDVDの方がチベ好きにとっては嬉しいかも?関東では館ひろしと鶴田真由が出演のジンガロ特番があったそうですね。新潟では放送されなかったんですが、ちゃんとチベットに関することもプログラムに組み込まれていたのかな~?
その他の「?」と感じるところも「コレは仏教儀式ぢゃなくアートなんだから・・・。」と自分に言い聞かせてました(笑)
とか言いながらも、しっかり感動して泣いたんですけどね^^;

Posted by: さちらも | 2005.05.09 at 09:36 AM

わおお。やっぱりこれおもしろそう!
ネタバレありと書いてあるから、うらるんたさんの記事はまだ読んでないのですが(笑)
舞台芸術としては、楽しめそうですね。
私は日本公演には行けなかったので、DVDででも観たいです。

※追記ちべビア(?):日本を代表する作曲家・武満徹に「風の馬」というタイトルの合唱曲があり、これは作曲者曰く、チベットで撮影された「ルンタ」の写真を見てインスピレーションを得て作られた曲だそうな。

とても美しい曲なのだが、チベット音楽の要素を取り入れたとかそういう類のものではなく、あくまでも純粋な現代音楽の技法による作品であり、歌詞もまた、チベット文化とは関係のない内容の現代詩が使われている。

……「うそつき。」
(武満さん、すみません)

Posted by: セン(ペマ) | 2005.05.09 at 11:31 AM

おお~、音楽ネタ@武満さんの話題が入る辺りセンくんらしいですね~。
そちらのブログかBBSにレス書こうと思ったんですが自分の目線は余りにも幼稚で恥ずかしいのでひかえました(^^;。なにせクラシックとかの純音楽はちゃんと聴かないので、TVで音楽番組の司会をなさっていた黛さんと芥川さんしか知らないから…。

自分は出不精×しみったれなのでジンガロはとうとう行きませんでしたが、学生(コドモ?)の時は一瞬ミュージカル好きだったりしたので、行っていたらそんなノリで楽しめていたかも。何かで読んだけれど、「西洋人が見たチベットのイメージ」、なのでしょうね。
最後の映像は、「チベットの写真や映像等を見たことが無い人にイメージを喚起してもらうもの」なのじゃないかな。うらるんたさんみたいにチベットを見慣れている人から見れば「蛇足」に見えるのだろうけれど、「初心者」には必要なのではないかと。

Posted by: 苦沙弥 | 2005.05.10 at 02:34 AM

Post a comment



(Not displayed with comment.)


Comments are moderated, and will not appear on this weblog until the author has approved them.



TrackBack

TrackBack URL for this entry:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/22378/3997238

Listed below are links to weblogs that reference ジンガロの「ルンタ」感想(ねたばれあり):

« ジンガロの「ルンタ」行きました! | Main | ジンガロの「ルンタ」雑感(ねたばれなし) »