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2005.07.20

「チベット難民」はいますか?

 季節の巡り合わせ(?)まだまだ続行中。
 今回はなんかものすごく大きな問い合わせが。うんうん唸って返信したものの、いまひとつこれで正しいのかなんなのか分からないので(私ゃ半可通だし)、ここに個人情報除いて晒しておきます。間違ってるところがあったらどなたか突っ込んで下さい。

 Subject: チベット難民について
 はじめまして。
 実際に難民の方にお会いし、お話ができたらと思っているのですが、日本にはチベット難民の方、もしくは難民申請の方はいらっしゃらないのでしょうか。

 一応書いてみた返事は以下。
 はじめまして。
 ルンタ・プロジェクト日本事務局のうらるんた(メールでは本名)です。
 > 日本にはチベット難民の方、もしくは難民申請の
 > 方はいらっしゃらないのでしょうか。
 「日本の難民、もしくは難民申請」というと、狭義では、政治的・社会的な理由のため自国を離れて来日し、日本政府に保護を求め、滞在(特別在留許可)が認められた人を指すことになる――かと思いますが(30年ほど前のインドシナ難民や現在訴訟を行っているアフガニスタンやビルマの出身者らがそのケースにあたるかと思います)、チベット人に関しては、そうした狭義の意味で日本政府が認定した政治亡命者はいないのではないかと思います。
 まあ理由といえば、日本政府が「中国政府は国内のチベット人を迫害し、時に生命に危険が及ぶ人権侵害を行っている」とは認めていないからではないかなあ、と推測するのですが。
 「ビルマ(ミャンマー)で民主化活動を行ったため、帰国すれば軍事政権により迫害を受ける危険がある」とか「アフガニスタンのタリバン政権は少数民族のハザラ人を迫害し、集団殺戮を行った」などのような現状把握や認識はしていない(=中国について、難民条約に基づく保護を認めなければならない状況とはとらえていない)のではないか、ということです。
 また、基本的に、日本における亡命申請は、日本の難民認定法に基づき、迫害を受けている国から第三国を経ずに日本にダイレクトに入国し、かつ入国から一定の期間内に申請しなければならないはずです(このあたり、私より、専門で勉強されている方のほうが詳しいかと思います。細部違っていると思いますがすいません)。さらに難民認定法では、自分に身の危険があるという証明を、申請者自身がしなければならなかったはずで、これは、通常は身一つで逃げてくる亡命者にとり非常に立証困難な部分があります。
 さらに、チベットからチベット人が第三国を経ずに来日する、というのは、ちょっと考えれば想像がつくかと思いますが、非常に困難です。国境を歩いて越えられる距離と地勢ではなく、また海へ船で漕ぎ出せるような地勢でもありません。中国政府にパスポートを申請して、合法的な手段で日本へ行こうとする時には、身辺調査や「コネ」その他で、お金持ちであり、中国政府に害をなさないことを調査された上でパスポートが交付されます。日本のように、申請して8000円払えば誰でも1週間でパスポートを取得できる国ではありません。
 とまあ、そういうわけで、狭義の「チベット難民」(日本政府が難民認定したチベット人)は日本にはいないだろう、という結論になってしまうのですが、では、もう少し広い一般的な意味での「チベット難民」(=政治的理由で中国領チベットを逃れ、日本を含む第3国で生活するチベット人)はいないか、といえば、これは大勢います。大勢というと言いすぎかもしれませんが、数十人はいると思います。
 チベット人の亡命者の多くは徒歩でヒマラヤ山脈の国境を越え、ネパール経由でインドへ逃れるケースがほとんどです。(かつてはネパール国内にとどまる亡命者もいましたが、ネパール政府が親中国路線を選択し、新規のチベット人の国内滞在を認めないようになりました。現在ネパール国内にあるチベット難民キャンプは、みな1960年代につくられたものと聞いています)
 そして、インド政府によりチベット難民と認められ、インド政府の居留証(レジデンスカード)を取得できたチベット人が、インド国内の難民キャンプやその他の場所で生活しています。そうしたチベット人は、インド政府の発行する身分証明書を根拠(パスポート代わり)にして、日本のビザを取得して、来日することができます。その場合、日本での滞在は、出入国管理および難民認定法に基づき特別在留許可を得た「難民」ではなく、短期滞在ビザや就学ビザ、就労ビザ、配偶者ビザなどを取得して日本に滞在している『無国籍者』(または『インド国籍者』『ネパール国籍者』※、『中国籍者』※……)となります。
 ※インド、ネパールは国籍が生地主義なので、両国で生まれた2世、3世は、インド国籍、ネパール国籍を持っていますから、インドやネパールのパスポートで、「インド人」「ネパール人」として来日している人も、もちろん、います。第3国の国籍を取得しても広義の意味でいえばもちろん「チベット難民」です。
 ※中国領チベットに住む人たちは中国国籍になりますので、中国のパスポートを取得して来日する中国籍チベット人もたくさんいます。多くは留学生、日本人の配偶者などです。彼らは、日本滞在を終えてチベット本土に戻り、中国政府の下で仕事を得て生活することを考えると、安全面から、日本国内のいわゆるチベット難民との交際は避ける傾向にあります。どこでチェックされているか分からないからです。
 そんなわけで、結論から先に書かず申し訳ありませんでしたが、日本で生活するチベット人の情報収集でしたらなによりもまず、東京都新宿区にある「ダライ・ラマ法王日本代表部事務所」(http://www.tibethouse.jp/)へ足を運んでみるべきと思います。インドのダラムサラにあるチベット亡命政府の関連機関として、文化的、政治的なさまざまな情報提供を受けられるはずです。なにより、運営しているのは皆、広義のチベット難民の方々ですし、日本語の堪能なチベット人もいます。
 暑い日が続きますがどうぞご自愛ください。

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