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2005.11.04

「風の王国 月神の爪」

kaze 東京までの往復を利用して、チベ系ライトノベルのシリーズ第5巻「風の王国 月神の爪」。
 ラノベって刊行ペース速いなあ! 7月末既刊だったらしいのを気付きませんでした。
 古代チベット吐蕃を舞台にソンツェン・ガンポの息子クンソン・クンツェンと文成公主のラブラブ政略結婚カップル、結婚から約2年、いよいよ舞台はヤルルン渓谷、さらに西の領国ツァン・プーへ。

嘘も偽りもない私を受けとめて…。ヤルルンへの道中、翠蘭はソンツェン・ガムポ大王の使者に命じられ、大王の二人の妃を連れ戻しにオンの谷へ。二人を伴いヤルルンに入った翠蘭は、大王に本物の公主かと尋ねられ、事実を語るが…。
コバルト文庫サイトの紹介文から)
詳しくは→ Amazon bk1

 <以下たぶんネタバレあり>
 ソンツェン・ガンポ出た――! ティツン妃(名前だけ)出た――! シャンシュン王国との確執が語られ、キュンルンなんて地名が出てきたりして、うふふふ、という感じです。ソンツェン・ガンポの食えない爺さんぶりはなかなか。「助平爺」とか描写されてたりして今後が思いやられますが、シャンシュンから嫁いだ第一王妃「リティクメン」と実は密かにラブラブっぽいようなシーンもあって、基本的に作者さんは夫婦の情愛を大切に思ってるんだなぁ優しいなあと思ったり。
 話のほうは、陰謀に謀反に大立ち回り、謀反制圧の裏にも思惑があって……な展開でなかなかスペクタクル。文成公主も殴られるわ吊るされるわ袋詰めにされるわの主役かつ王妃とは思えない被虐待っぷりです。ダンナより奥さんが手ひどくいたぶられてるのはジェンダー的にはどうなんだ(^^;)。ま、最初「舅に言い寄られるわ先妻に嫉妬されるわ宰相と不倫するわでチベット版『大奥』になるんじゃぁ…」なんて冗談が出てましたが、そういうドロドロより権力闘争のドロドロと国盗り物語のほうが楽しいよね。
 それにしても、助平爺ソンツェン・ガンポと老獪なツァン・プー領主スツェの爺2人の存在感が大きくて(過去になにかあったことを暗示するような互いの回想シーンも示唆的)、若きクンソン・クンツェン王食われまくりです。偉大な父親を持つと苦労するねぃ。
 ツァン・プー討伐が実際にあったかどうかは勉強不足にして知らんのですが(申し訳ない)、この流れでいくと史実どおりのシャンシュン遠征、吐谷渾との騒動、文成公主の妊娠出産にクンソン王の早世までありそう。どうするんだー。
 ところでやはり位置関係や地図の問い合わせが多いのでしょう、「あとがき」では地理に触れられているんですが、

地理の話を…、と思っていたのですが、1ページしかありませんので、とりあえずシャンシュンの位置を。7世紀の吐蕃の地図を見るとき、向かって左側のヒマラヤ山脈沿いに(中略)詳しく自分の目で見たい! とお思いの方は、山口瑞鳳先生のご著書、『チベット・下』や『吐蕃王国成立史研究』をご覧くださいませ。(中略)ちなみにツァン・プーは現在のツァン地方、シガツェからラツェから北を含む地帯、と考えていただくと、チベットの地理を知っておられる方には分かりやすいかと思います。

と見事なまでの突き放しっぷり。読者層はたぶん中高生メインだと思うんだけど、いきなり山口瑞鳳「チベット」(←定番の専門書。上下で1冊3000円くらいする)薦められたら泣くんじゃないか(わはは)。もっとも、中高生は授業で「世界史図説」とか持ってて却って歴史地図に強いのかもしれないけど。
 口絵に1枚地図をつけてくれればいいのになあ。多少脚色した「風の王国」版の架空吐蕃地図とかさ(そしたらいちいち現実のチベット想起してきゃあきゃあ騒ぐ私のよーなチベあほ読者は減ると思^^;)。いや待てよ、作者さんのその甘えを許さない姿勢に鍛えられ、中高生にして『チベット上下』読みこなした人たちが、明日のチベット研究を背負ってたつチベット学者として育つのかも。『キャプテン翼』から中田が生まれ『スラムダンク』で田伏が育ったように(真偽は知りまっせん)。
 地図に関しては「ちべビア」にスキャンをあげてますが(あまりほめられた行為ではないっすね)、ダヤンウルスさんとこの素材とか資料元に自作で作っている方もいらっしゃいました(すごい! 見やすい! わかりやすい! トラックバックもいただいていました!)→中華歴史小説ファンブログ「小芙蓉城」

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Comments

> ツァン・プー討伐が実際にあったかどうかは勉強不足にして知らんのですが(申し訳ない)、

これは敦煌文献にある話で史実ですよ。

キュンポ・プンセー・スツェとンガクレ・キュン親子は実在の人物ですが、孫セデレク(家臣でこんな王家っぽい名前はまずありえない)は架空の人物。史実では謀反を企てるのはスツェ自身なのですが、敵役がジジイではコバルトとしてまずい、ということなのでしょう。

小説でのスツェは「威厳のある功臣」といった描き方ですが、史実のスツェは小説よりももっと面白い性格です。「武力にも謀略にも勝れた有能な武人だが、何かと一言多いのでソンツェン・ガンポに嫌われている、食えないオヤジ」といった感じ。

Posted by: orubhatra | 2005.11.10 at 12:14 AM

「風の王国」著者はやっぱり五木寛の小説を読んでると思うなあ~、漫画は知りませんがこの小説は漫画のように面白いですよ。チベットの空跳ぶ人の話も出てくるし。まずは下記あたりを...
http://www.isis.ne.jp/mnn/senya/senya0801.html

Posted by: 酔鬼 | 2005.11.10 at 06:02 PM

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