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2006.11.17

小さい母さん(アマ・チュンワ)と呼ばれて――チベット、私の故郷

Photo  ダラムサラ行き直前の10月末のこと。
 帰宅した深夜のポストに、ルンタ・プロジェクト宛の1冊の本が。事務局の看板上げてるとたまにこんな役得もありますふふふ……と中を開けると、「小さい母さん(アマ・チュンワ)と呼ばれて――チベット、私の故郷」(集英社、クンサン・ハモ著)。→bk-1
 わぁすごい、とうとうチベット人が日本語で本を出せる日が来たんだ(いや、ペマ・ギャルポ氏とか先駆者はもちろんいるんだけど)、と感激して本を開く。クンサン・ハモさんって名前は記憶にないけどペンネームかな、そりゃそうだよな、ラサ出身で親類縁者がたくさん本土にいるのなら日本で本なんか出したら差し障りあるだろうしな――と、知っているチベット人の顔を思い浮かべながらぱらぱらと内容を確認するうち、止まらなくなった。翌日も早いのに、仕事山積みなのに、少しでも寝なきゃいけないのに、明け方4時読了。布団にもぐりこんで数時間、チベットの夢を見ました。
 チベットが中国共産党統治に移っていく激動の時代に幼少を過ごし、難民としてインドに逃れ、縁あって日本へ渡ったチベット人女性(1959年ラサ生まれ、とプロフィルにはある)が、国籍を移し「外国人旅行者」としてチベット本土を再訪、長く離れ離れだった親類と再開する旅行記と随想。止まらなくなってしまったのは、故郷チベットを離れ、帰れないまま異郷で暮らすチベットの友人が私の周囲にもたくさんいるから。さまざまに複雑で揺れ動く気持ちを抱えていると思うんだけど、私の拙い英語や北京語では奥底の微妙なものまで言葉で分かち合うことはできず、ただ勝手に想像するしかなく、もしかしたら思い込みかもしれない、一方的な押し付けかもしれない、そんな自戒(自嘲かも)を抱えつつ、友人たちを思っているのでした。
 だから、チベット人がチベット人としてチベットを旅した随想録――って、ものすごく画期的だったのですよ(私には)。チベット(本土)で暮らすチベット人と、本土を長く離れた著者とのやりとりで、小さなギャップやとまどいが生まれては消えていく一つ一つのエピソードが切なくて、××××先生が里帰りしたら何を見るのだろう、××××さんが日本国籍取れたら一緒にチベット行きたいなあ、と、友人知人の顔が具体的に思い浮かんできたのでした。
 印象的だったのは、遠縁の夫婦を訪ねて食事中、外国からの来客である著者に向かって、「昔に比べたら今は生活が良くなった」と人民日報のコメントのような教科書的感想を口にした若い奥さんのエピソード。「本当にそう思っているの」とショックを受ける著者、「本心じゃないだろう」と冷静に指摘する夫、「相手がどんな人か信頼ができない間はきれいごとだけを言っておく習慣が自然に身について……」と恥じ入る若奥さん。そうなんですよこれこそチベットの(中国の)現実ですよ、私が中国に(チベット本土に)何回行ってどれだけ滞在しようと、本心をぶちまけて付き合える友人なんかできないんですよ、チベット人同士だって互いを信頼できないんですよ……といろいろ思い返していたら泣けてきて、涙が止まらなくなったのには自分でもびっくり。おい待てどうしたんだ自分。まあほら、ダラムサラ行き直前で仕事も山積みで、精神的に追い詰められていたんだと思うんだけど。
 というわけで、「チベットのことを知りたい」という人だけでなく、「チベットのことならいろいろ知ってるよ」という人にこそ、読んでほしい本だな、と思ったのでした。
         ◇
 ところでちょっとした後日談。
 ダラムサラ滞在中、「こんな本が届いてね……」という話をしたら、友人が「そんな本が出たんだ、読みたいなあ、クンサン・ハモって××××さんのペンネームだよね」。
 ええええええ
 「うそー、プロフィルにはラサ生まれって書いてあるよー! 信じて読んで感動して泣いちゃったのにー!!」
 「いや嘘はついてないんじゃない? ノンフィクションとは書いてないんでしょ?」
 ぇぇぇぇぇぇぇぇぇ
 
「やっぱり信じらんない、すっごくリアルだったのにー」
 「だから嘘は書いてなくて、本当のことなのかもよ」(←慰めてくれている)
 いやぁ真偽は分からんぞ。何より読んで良かった、いろいろ考えさせられた。でも頭の中には瞬間的に「イザヤ・ベンダサン?」「ポール・ボネ?」とか浮かんじゃって(ふ、古っ!!)。泣き損だなんて思わないからいいもん!
         ◇
 この本も、拾う神のSさんに託すことができて、来週中にはルンタ・レストランの本棚に入ることになりました。Sさんありがとうございます。ダラムサラを通り過ぎる旅人が、1人でも多く目を通してくれて、チベット人の心に触れてもらえれば、と思っています。お薦めです。

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