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2007.07.29

チベット人の選挙演説

 (この項は7月30日以降に公開しています)
 7月23日に市内であったペマギャルポさんの街頭演説です。せっかく真面目に聞いてメモも取ったので、あと、「こんなことを話すんだ面白いなあ」と感じた部分もあったので、記録がてらに。

Dsc_0087  3人寄れば文殊の知恵、といいます。国民新党は24人の仲間たちで、それこそ千手の観音様のように、それぞれの専門分野を持って、日本をもう一回再生しようと決意しております。
 先ほどお話し頂きました綿貫先生
(注:綿貫民輔・国民新党代表。隣にいた。この日のメインゲスト)、今日いらっしゃる小林興起先生、そして長谷川先生(長谷川憲正・党副幹事長。同席してた)は国会の中心にいた方。自分たちの権力の座より、リスクをとって、この国を守るために立ち上がった、正義感の強い人たちの集まりであります。
 国民新党は「ぶれない」政治を約束します。「ぶれない政治」とは、国民の、国民による、国民のための政治をし、国益を考える政治。だからこそ、あの郵政問題のように、自国の利益を、他国の圧力や他国の都合に売り渡すことは決してしません。
 国民新党は「こびない政治」を約束します。「こびない」政治とは何か。日本はアメリカの属国ではありません。いかなる国に対しても、あくまでも自主独立の姿勢をきちんと守り、日本の国益のためにやっていくのが「こびない政治」であります。もう一つは「おごらない政治」。残念ながら、戦後、戦争に負けてからこの国をふたたび再建し、今の豊かさと便利さを作った、吉田茂先生、岸信介先生のお孫さんたちは今、温室育ちで、数だけそろえるような、傲慢な政治をしている。私たちは、あくまでも謙虚な気持ちで国民のためにサービスします。

 文殊菩薩の話をマクラに持ってくるとはさっすがチベタン(違うか)。
 今回の参院選で、異なる民族からの視点を視座に入れて(※)立候補しているのは、ペマさんのほか、民主党のツルネン・マルテイさん(フィンランド出身)と金政玉(キム・ジョンオク)さん(在日コリアン2世。車椅子の障害者でもあるそう)、新党大地の多原香里さん(アイヌ民族)、あとこれはちょっと特殊例だと思うけど国民新党のアルベルト・フジモリ氏(元ペルー大統領)。ペマさん、ツルネイさんがいわゆる“外国人”、金さんと多原さんが日本のなかの少数民族や先住民にあたります。
 個人的には少数者の声を代弁する人にどんどん国会で発言してほしいと思っていて、党派関係なく全員当選くらいの勢いでいってほしかったんですが(ツルネンさんは民主比例6位で当選、金さんは比例35人中最下位で落選。多原さんは北海道選挙区で次点でした)。

 ※「日本人」という言葉、日本国籍保持者を指すのか、日本的な価値観や生活習慣(=文化)をバックに持つ文化的集団を指すのか(『日本民族』とは言わないし大和民族ってのが定義されてるんだかなんだかなので「日本人」としか言いようがない)あいまいなので、こういうこと書くときちょっと困ります。うまくぴしっと書けずにまだるっこしい文になってますがご容赦。あと、「あの人は元からの日本人じゃないんだって」的な排他的な感覚で誰かの出自を云々するつもりはなく、文化意識ってのは多分に自己認識や自己規定(=アイデンティティ)だと思ってるので、仮に、少数者であることをあえて明らかにせず日本のマジョリティグループとして立候補している人がもしいたとしても、有権者としてはそこに関心はありません。

 国会で超党派の「チベット問題を考える議員連盟」の事務局したり、ダラムサラを訪ねてダライラマ14世と面会したり、毎年3月10日のチベット民族蜂起ピースマーチに実際に参加して、「チベット問題に積極的」というイメージになってるのは民主党なので(というより関心があって実際に動いてくれる人が民主党にいた、というほうが適切か……)、ペマさんの出馬が、今回追い風が吹いている民主党からだったら、あるいは、という妄想も、なくはありません。(民主比例の20位当選者は7万票足らずでの滑り込みでしたし。ま、ペマさんの個人票は2万3254票でいずれにしろ届いてませんが……)。
 ま、このとき集まってた人は、「大樹」などの郵便局関係者がほとんどで、地元東北の津島恭一、綿貫民輔目当て。ペマさんの話に、「日本語がうまいねえ」と感心し、「岸信介の孫」をくさしたくだりでは大ウケでした。(言わずもがなですが、吉田茂の孫は麻生太郎外務大臣、岸信介の孫は安倍晋三首相です)

Dsc_0066  私は42年前に、共産党しか存在しない独裁国家から逃れて、インド経由で日本に来ました。そのときの日本は、これから先進国になろう、これから豊かになろうと一生懸命頑張っていました。あのころは、日本人は非常に謙虚だったんです。日本の方に「商売はどうですか」と聞くと「おかげさまで」でした。「健康はどうですか」と聞くと「おかげさまで」でした。「勉強は進んでますか」と尋ねると「おかげさまで」と言いました。どんなことを聞いても「おかげさまで」と答えました。つまり、自分だけを気にするのではなく、自分は大自然をはじめ、多くの方のおかげで生かされているということをきちんと意識していたのです。
 いまの政治に足りないのは、そういう「生かされている」という意識ではないでしょうか。国際社会のなかでも、家庭でも、「生かされている」という意識が足りないのではないでしょうか。42年前の日本人はすばらしい精神文化を持っていたのです。
 私は埼玉でお世話になりました。埼玉では「こんにちは」といえば必ず笑顔で「こんにちは」とあいさつしてくださった。外出するときも家にはロックを掛けず、「ちょっとお願い」と頼んで外出できたんです。おいしいものをもらったら、近所で分けて食べたんです。それが、今はどうでしょうか皆さん。家には二重三重にロックを掛けて、さらに防犯カメラをつけて、それでも安心して暮らせないような社会になりました。
 私が日本に来たころは、日本には「上を向いて歩こう」という歌がありました。「あしたがあるさ」という歌もありました。皆さんは夢を持っていました。マイカーを持とう、マイホームを持とうという、それなりに、自分の人生の設計ができたのであります。しかし、今は規制緩和の名の下で、無計画な秩序。東京においては、私や、私より若い人が残飯をあさって生活しています。これは決して、世界第2位の経済大国の姿としてふさわしくないと思います。あの世で吉田茂先生も、岸信介先生もきっと泣いているだろうと思います。

 「あの世で泣いている」のくだりでは、聴衆から「そうだ!」の合いの手も。……チベット仏教の輪廻転生には「あの世」はないので、吉田茂や岸信介は別に見てないのでは、つうかそのへんの鳩や猫になっているかもしれないのでは、とも思うわけですが、まあそれは置いておいて。さすがテレビコメンテーター、うまいこと話すなあ、と感心させられました。聴衆の心ガッチリだもん。

 私は、42年間この国で生活をし、大学まで出してくださった日本の多くの方々のおかげで今の私があると思っています。ですから、40年間無国籍で来ましたが、1年2カ月前に国籍を取りました。今回こうして選挙に出ることで、私なりの恩返しをしたいと思ったからです。
 私は日本で大学を卒業し、その後15年間、ダライラマ法王の代表として、外交官としての生活をしてきました。法王がノーベル平和賞を受賞した時に、これで一段落ついたと思い、再び大学に戻り、大学では国際政治を研究してきました。ですから私は日本の15年間の大学での研究、外交官としての経験を生かして、まず何よりも、日本が国際社会において正しく理解され、感謝されるような行為を行い、日本と外国の架け橋になりたいと思って立候補いたしました。
 皆さん。皆さんの先輩たちはこの国を再建しただけではありません。この地球上に、今まで例のない、すばらしい国を作ったんです。日本は、地獄を体験したのみならず、アジア各国の今日の経済発展に多大な貢献をしました。しかし残念ながら、日本が国連の常任理事国になりたいと言った時に、一歩前に出て日本を支持したのはたった3カ国です。モンゴル、モルジブ、ブータンであります。アジアだけでも47カ国あるのに、たった3カ国が日本に感謝をして1歩前に出ました。これは日本の外交の失敗だと思います。私は外交官としての経験を生かして、日本の自主独立の外交と防衛を
(確立させます)。今、中国や北朝鮮は(どうでしょう)。中国は毎年2ケタの軍事費を増強し、中国も北朝鮮もミサイルの照準を日本に合わせている。そのような状況において、自主独立の防衛をやりたいのです。

 ううむ、このあたりはちょっと難しいなぁ。「皆さん」(「私たちは」ではなく。しょうがないんだけどさ)という呼びかけ、「皆さんの先輩方は」という表現からは、一般聴衆との間に線を引いて一歩外側に立ってる風な、あるいは一段高いところに立って啓蒙教示する風な上から視線が感じられて、日本風の土下座選挙が当たり前なおじさんおばさんはちょっと引いてしまったかもしれません。コメンテーターや評論家であれば当然な言い方ものの見方であるのですが、政治家、選挙に強い政治家となると別だからなあ……。

 何よりも、私は難民として日本に来ました。私は難民として、あたたかさ、やさしさを受けて生活してきました。だから私は日本に来たとき、この国は天国みたいだったんです。
 しかしその私にとって天国みたいで、42年間住んでしまった国が、いつのまにか、気がついたら、この国のために一生懸命働いて汗水垂らして働いた人たちが、老後の生活に不安を感じなければいけなくなってるんです。日本国憲法は、すべての国民に、文化的な最低限度の生活を保障しているはずです。だけど6万6000円でどうやって文化的な生活ができるんですか。今の年金が6万6000円。国会におられる温室育ちの人たちが一晩で飲み食いする程度のお金です。
 しかも、日本では今、公共事業を無視し、なんでもかんでも民営化です。民営化は合法的などろぼうだと私は思います。ガス、水道、電気、全部株式化されています。そして、ガス代払えない人、電気代払えない人、水道代払えない人は、元から切られたら、これは死ねということと同じです。なぜ国民は怒らないのでしょうか。これは政治による構造的暴力だと思います。
 私は最低限度、ガス水道電気、――もちろん日本には社会に甘えて自分がパチンコに行きたいから子供の給食代を払わないなんておかしな人もいますが――そうでなくて、今まで一生懸命この国の基礎を作ってきて、この国のために一生懸命働いてきた方々に対して、ガス水道電気を切るということは、まさに死ねということと同じだと思います。憲法で保障する文化的生活に対しても憲法違反だと思います。
 消費税も同じです。少なくとも、食料に対しては消費税を掛けるべきでないと思います。もっとぜいたくなものに税金をかけ、大企業、多国籍企業、いまのITや銀行など取れるところから税金を取るべきだと思います。けっして私たちは、税金を払うのに反対して、国を飢え死にさせようとは思っていません。しかし、取れるところと取るべきでないところ
(があると思います)。税金を取るということは、財政、国の豊かさをもう1回再分配するということです。

 「公共事業を無視」「民営化は合法的などろぼう」のあたりで拍手が起こっていました。そういう層が国民新党支持者に多いってことだなあと感じたり。このへんからペマさん、すごい早口になって、これまで聞いたことのある話し方に戻ってきてます。

 最後に私の分野の話をさせてください。
 私たちは国会議員半減を掲げています。私の研究対象は中国とインドです。いずれの国もあと7年から13年で日本を追い越して、世界第2位と3位の経済大国になる国です。この中国は日本の13倍、13億5000万人の人口を持っています。しかし国会議員は、いわゆる衆院議員に相当する全人代(全国人民代表大会)の評議員たった190人です。参議院に相当する政治協商会議の常務委員は、現段階では179人です。インドは日本の10倍の人口を持っております。今非常に注目されているインドも、上院議員は243人、下院議員は545人で日本とほぼ同じ数です。日本の国会議員の数はあまりにも多すぎます。日本の同盟国アメリカは、日本の3倍の人口を持っていて、上院議員はたった100人です。下院議員は443人です。
 日本の国会議員は多すぎるのと、いつのまにか、ただの操り人形ばっかり集めています。操り人形を集めて、一部の政治家がいうことに「賛成」「反対」すればいい。皆さんが1人の国会議員を維持するために毎年1億円使っているんですよ。これは無駄遣いです。皆さんの税金で、ちょっと美人だからといって誰かが1年間、国会議員のバッジをつけて1億円もらうのは、いいんですか皆さん。許していいんですか。一方で日本では、一生懸命今までこの国のために働き、老後のためにこつこつためたお金はどんどん外国に流れるということをやってるんです。
 日本の国会議員を半減すると、長谷川先生はじめ私たちも選ばれる確率が低くなります。だけど、やらなければならないことです。
 皆さん、7月29日は皆さんが主権在民です。あくまでも、この国の主体性を持っているのは国民です。今の法律では、政治を変えるのは政治家ではありません。政治を変えるのは、皆さんの1票1票の結果です。
 間違ってあの小泉ブームの時にああいう問題を起こした人も、皆さんが1票の使い方を間違ったんです。そのために今、毎年3万人が自殺している。その大部分は経済的理由ですよ。今度の7月29日は皆さんが無血のクーデターを起こす時期です。皆さんが立ち上がる時期です。
Dsc_0005  わが国民新党は、唯一健全な野党として、唯一健全な理論を持ち、唯一健全な大衆政党として皆さんの期待に応えられる政党です。
 
今、マスコミは国民新党が伸び悩んでいると言っています。もう時間ですから、日本に来たら時間を守ることが一つの勉強ですから、これ以上ヘマしないように、ここで終わりにしますが、どうか、今度の7月29日は無血クーデターを起こし、日本のマスコミが間違っていることを示してください。
 私たちは14人です。14人全員当選をお願いします。私が日本に来た時のサカタ××××
(聞き取れず)先生は「人を先に、私は後に」と言いましたので、ここで「ペマをよろしく」と言うとサカタ先生に叱られますので、全員の当選をどうかよろしくお願いします。(了)

 「ヘマしないように」のところで、私の横にいた人が、「ねぇねぇ、今のギャグだよ、名前がペマだからさ、ヘマしないように、って言ったんだろうね」と解説しながら笑ってました。や、やさしいなあ東北人(笑)。
 個人的には、「無血のクーデターを」「皆さんが立ち上がる時期」あたりに、どこかチベット的な言い回しの名残の熱さを感じて「さすがチベタンの街宣だ」とちょっと嬉しくなってたり。1959年のラサの風、というか(違うか)。聴衆はぽかんとしてたけど(ははは)。まぁそりゃ、私含めそのへんの日本人は、仮に安倍政権に辟易してたとしても、無血だろうが有血だろうがクーデター(政府転覆)まではちょっと、という感じかと。60年安保の時代じゃないからなあ。民主党だって「政権交代(=今の国会の枠組みの中で多数派となって主導権を握る)」としか言ってないし、共産党ときたら最初から政権奪取はあきらめて「確かな野党」だし(笑)。
Dsc_0121  あとは、他の比例候補2人が「私の大叔父は太宰治です。比例候補の中で最も文化的なのは私津島です」(津島恭一)、「今日は家内も、若い塾生も駆けつけてくれました。平成の坂本龍馬、小林興起。2枚目の投票用紙には小林こうきとお願いします」(小林興起。奥さんは本当に美人だったなあ)と懸命に自分を売り込んでいたのに対して、名前の連呼がなかったのが印象的でした。チベット人らしく奥ゆかしさを発揮したのか、建前はともかく実態は浮動票狙いの有名人候補として政党票の積み上げをはかるって役割を割り切って任じちゃっているのか。
 個人的には、ペマギャルポさんの政治的スタンスも分かったところで、ぜひ(もしかしたらもう勤めあげて任期満了なのかもしれないけど)、チベット亡命政府の国会議員選挙に出て当選して亡命政府大臣を目指してもらいたい(フジモリ元大統領の出馬がアリなら、チベット亡命政府大臣との兼任だって可能なんじゃん!?)などと考えたりもしたのでした。 

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Comments

こんにちは。
ピースマーチでお会いしましたが、この名前じゃわかりませんよね!

実は私はペマ・ギャルポさんに投票するか迷いました。
何でかと言うと、国際情勢によって核武装をするかという
アンケートでYesという答えだったので。
非暴力じゃないの!?と思ったんですよね~。でも党としては
そうではないみたいなので国民新党にしましたけど。
いろんなマニフェスト読みましたけど、ペマさんが一番いいこと言ってますね~。

Posted by: sally | 2007.08.03 at 12:48 PM

こんにちは! Run for Tibetから戻ってきたうらるんたです。
私も別にペマさん運動員じゃないし支持政党なし派なんですが、たまたま機会があったので個人的興味でメモとりました(^^)誰に入れたかはナイショで(^^)
自衛隊の軍隊化や武装については、チベット人だったら、「チベット独立のため武力を使うか」と聞かれたら、まず間違いなく「法王が許すのなら今すぐでも」「状況によっては」と答える気がするので、その帰属意識が日本に向かったと思うとそうだろうなーと……(そしてそのあたりは日本人的なものと違う部分もあるかなーー?と。理解できる、と支持する、は別ですから)。
ペマさんには今後もどんどん発言していってもらいたいので、今回、1回立候補して政党色がついてしまったことで、テレビ出演とか講演なんかが減らないといいなあ、と思っています。

Posted by: うらるんた@管理人 | 2007.08.06 at 09:58 AM

>「法王が許すのなら今すぐでも」

そうですね。このへんよーくわかります。
言ってる言葉は同じでも、その背景はまったく異なるんだなぁと思いました。ほんと、どんどん発言してもらいたいです。日本の政治家はどうも煮え切らないORワンマンで強引に決断!なので・・・

あ、RUN FOR TIBETお疲れ様でした。モチヅキです。
またダラムサラのことなど聞きたいのでよろしくおねがいします!

Posted by: sally | 2007.08.07 at 02:33 PM

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