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December 2008

2008.12.01

Jigdrel(ジグディル)

 「Jigdrel」というチベット人が撮った記録映像は、10月、日本のチベタンの友人から聞いて知った。(寡聞にしてそれまで知らなかった)
 その友人は、亡命2世世代で、異郷で生まれて難民学校で育ち、ふるさとチベットを自分の目で見たことがない。
 「外国の撮影隊が作った映画はあるけど、これは、本土のチベット人が自分で撮ったところが違うんだ。中国政府はすぐに『分裂主義者の工作』とか言って、3月の抗議活動も『外国から危険分子が扇動した』なんていうけど、この映像を見れば全部ウソだって分かる。本土のチベット人が『やらなきゃ』と自分でビデオを持って旅に出て、映って話している人も、無理やりじゃなくて自分の意思で『自分はこう思います』ってカメラの前で意見を言ってるんだ」。
 説明しながら、友人の目は少し潤んでいた。
 「そして、撮影した人は2人とも中国政府に連れて行かれて行方不明なんだ」(当時。10月15日、1人は監視つきで釈放された)

 ネット公開されていた映像は英語字幕。
 「日本人に見てもらうには、日本語に訳して日本語の字幕がないと」「ある程度チベットのことを知らないと、見てもわからないかも。解説がいると思う」。一緒に映像をみた人たちの間から、その場でさまざまな意見が出た。全員が「上映する」ことを前提にしていた。「字幕加工ならできる」と手を上げる人、「英語字幕をまず日本語に直してみますね」と申し出る人。「会場探しておきますね」「チラシ作れます」……。
 実をいうと私なんか自分でできる範囲のことしか想像力が働かず、内心「えぇー、字幕なんて一般人にはムリでしょ」「ネット配信のものをどうやって加工するの」と悲観的に眺めていたので「え!? できるの」「え!? え!? それもできるの!?」と、ただ圧倒。すいません。世の中、デキる人はほんとに凄い、と感服。

 チベット語→英語→日本語と迂回すると、もしかしたら、2回訳す間に意味がズレるかもしれない。友人は「映像で話されてるチベット語は方言が強くて、難民キャンプの標準チベット語で育った自分には完全には意味が分からない」という。
 映像の冒頭、「東チベットで……」とナレーションが入っているのを手がかりに、東チベットならカム(Kham)だ、カムの言葉が分かる人に監修をお願いしよう、とカンパ(カム人)協力者探しが始まった。
 カム方言といっても地域差があり、チャムド、リタン、ギャロン、タウ、カンゼ、デチェン、ムリ……と、それぞれ言葉が違うという。(日本語でも、同じ関西弁だからといって、京都言葉のことを岸和田の人に聞いたりしないと思うし。)カムに詳しい日本人にも協力を頼んだりして、カムの中のさらにどの方言なのか確認しようとしていた10月下旬、拘束され行方不明だったこの映像の撮影協力者が釈放されたというニュースが入った。

チベット人の「本音」描いたドキュメンタリー映画の制作協力者、7か月ぶりに釈放(AFP-BBニュース日本語版 2008年10月21日)
http://www.afpbb.com/article/politics/2530617/3450448?blog=alcom

 「甘粛省のラブラン寺に戻り」……。
 って、カムじゃないじゃん、アムドじゃん!! だから(アムドの)西寧拘置所に拘留されていたのか。そういうことか。
 すぐにアムド出身の知り合いに聞く。
 「Jigdrelって知ってる?」「知ってるよ」「インタビューで話してた言葉、聞き取れた? 英語なくても分かるの?」「(笑って)当たり前じゃないか。自分の言葉だよ」

 生まれて一度も見たことのない、足を踏み入れたことのないふるさとの人たちが撮影した映像を何度も何度も繰り返し見て、ふるさとへの言い尽くせない思いを胸に「これを日本人に見てほしい」と訴えたチベットの友人。
 その土地で生まれ育ち、温かい思い出も嫌な記憶もすべて抱え、友人も親類も残したまま離れざるを得ず、(現在の情勢では)再び戻って故郷で暮らすことは絶望的ななか、遠く離れた日本で、インターネット越しの映像で、現状を訴えるふるさとの言葉を聞いたチベットの友人――。
 なんだか泣けてきた。

 こうしてさまざまな人の協力で実現した「Jigdrel」日本語字幕版。
 ほんと私は横から成功を祈りつつ己のスキルのなさを実感してただけで何も能力を提供できなかったけど、年内に上映が実現することになって勝手に嬉しい。
 地元でもチベせんに機会を作ってもらった。ゲストなし、映像見るだけの地味イベントですが、経費かけないぶん値段もそこそこなので(無料にしないのは余剰分を「Filming for Tibet」に寄付するためです)、1人でも多くの参加があれば、と思ってます。

【東京上映会】
日時: 2008年12月6日(土)午後7時
場所: 大久保地域センター4階多目的ホール
    (東京都新宿区大久保2-12-7)
参加費: 1000円
予約: SFT日本(予約専用) sft_jp_move@yahoo.co.jp

【仙台上映会】
日時: 2008年12月7日(日)午後2時
場所: みやぎ婦人会館5階第2会議室
    仙台市青葉区錦町1-1-20
参加費:500円/予約不要
詳細: http://www.tibesen.com/


(以下転載)

チベットの「いま」を伝えるドキュメンタリー
「Jigdrel(ジグディル)― LEAVING FEAR BEHIND」
   


2008年、チベット。20人がカメラの前で恐れることなく本当の気持ちを語った。フィルムは極秘にチベットから持ち出され、撮影した青年と僧侶は中国政府に逮捕された――。
近づく北京五輪に沸き立つ中国の裏側で、チベット人は何を思い、何を感じ、どう生きているのかを世界に伝える証言映像。

Filming for Tibet(スイス)の協力でStudents for a Free TIBET Japan(SFT日本)が日本語訳と字幕制作を行ったものです。

■日時: 2008年12月6日(土)午後7時
■場所: 大久保地域センター4階多目的ホール
    (東京都新宿区大久保2-12-7)
■ゲスト:ダライラマ法王日本代表部事務所
     代表 ラクパ・ツォコ氏
■参加費:1000円
■定員:100人
■申し込み・問い合わせ:SFT日本事務局
 参加申し込み専用 sft_jp_move@yahoo.co.jp
 参加予約以外の問い合わせ sftjapan2008@gmail.com
■主催:Students for a Free TIBET Japan(SFT 日本)    
■協力:(社)アムネスティ・インターナショナル日本・チベットチーム

【ドキュメンタリー「LEAVING FEAR BEHIND」について】

2007年10月から2008年3月にかけ、チベット東北部アムド地方在住の農民トンドゥプ・ワンチェン(34歳)と僧侶ジグメ・ギャツオ(39歳)の2人が、チベット各地で極秘にインタビュー取材したVTRを、トンドゥプの従兄弟であるスイス在住のギャルジョン・ツェリンが編集し、25分のネットムービーとして公開した。チベット語原題は「Jigdrel(ジグデル)」(=恐怖を乗り越える)。日々の社会的抑圧や政治的迫害を感じながら生活するチベット本土のチベット人が、北京五輪についてどう感じているのか、置かれている政治的状況をどうに考えているのか、強制移住や中国政府による資源収奪や教育・文化面での抑圧の実態を、「恐怖を乗り越えて」カメラの前で赤裸々に語った、チベットの「いま」を伝える貴重なインタビュー映像である。

取材した2人は2008年3月にラサからチベット各地に広がった騒乱の直後、相次いで逮捕された。ジグメ・ギャツオは過酷な拷問と虐待の後に2008年10月15日に仮釈放されたものの、現在も厳しい監視下に置かれている。トンドゥプ・ワンチェンの行方はいまもわかっておらず、政治的な理由から拘束されている多くのチベット人とともに安否が懸念されている。

LEAVING FEAR BEHIND公式サイト
http://www.leavingfearbehind.com/

(東京・仙台以降の各地の上映会予定は→SFT日本の「"LEAVING FEAR BEHIND"「恐怖を乗り越えて」特設ページ」へ)

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