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August 2010

2010.08.06

ウイグルのウイグル語

[覚え書き※ブックマーク用、ツイッター連投のまとめ]

[元発言]

都内の某大手の公共図書館にウイグル人を連れて行った際に、「ウイグル語大辞典」が閲覧できるのに驚いて、彼はそれを貪るように読んだ。祖国(シナの自治区)では、自民族の文字はおおっぴらには読めない。今後、彼らの先祖の文化は、日本語とペアの形でしか残せないだろうと。(引用元/@ykodama

に対する知人のツイート

外国の大きな図書館にでも行かない限り自分の母語の辞書すら読めないなんていう状況の人がいることをあらためて知った。国策である程度はチベット仏教研究が保護されているチベットなどまだ恵まれているのか。涙出るね。(引用元

に対する返信として

 「『ウイグルではウイグルの文字はおおっぴらに読めない』とウイグル人が嘆いた(→ウイグル自治区ではウイグル語が制限され、文字や言語が消えつつある)」という発言が繰り返しリツイートされ、「チベットはまだマシなのか」とつぶやいてた件ですが、あれはいくらなんでも煽りすぎだし不正確だしデマに近いものがあるだろうと思ってます。
 「ウイグル語の辞書はおおっぴらにウルムチの新華書店で売ってますが。彼は日本暮らしが長くて母語の活字に飢えていただけではないのですか?」(引用元)って突っ込みも入っているけど、このへん(ウイグル語テキストの購入について「ウルムチでお買い求めくださいとしか言いようがない」)を見てもこのへん(新華書店の半分はウイグル語書籍)を見ても、はるか外国の図書館で禁書となった母語の辞書に巡り合って思わず涙をこぼす、というシチュエーションには思えません。「区立レベルの公共図書館にウイグル語辞書があって品ぞろえに感激した」とか「(中国の図書館は閉架式だから)自由に手に取れる開架式の日本の公共図書館に感心した」とか、何か違う部分に反応したのを、元発言の主が半分以上妄想を足して頭の中の世界で解釈してしまったのでは、と考えたりします。
 ***さんが中国国内でのチベット語書籍(仏教経典含む)について「国策である程度は保護されている」と看破していると同様、「国策で」街の看板にはウイグル語があふれ、書店にはウイグル語書籍が並んでいて、むしろ「ウイグル語たくさんあるね、異文化情緒たっぷりだね、当局は少数民族文化を保護してるんだね」と感じさせるツクリになっていると思います。「文字」だけをいうなら、ウイグル語はアラビア文字を使うので、PC入力もチベット文字よりずっと障壁が低く、普及が早かったと思います。
 ただ、じゃあそれでいいのかというと、私自身はそうは思ってないです。量があっても質がない(まあこれは少数民族言語に限りませんが)。ウイグルの歴史を独自の視点から研究するような本もルポルタージュも民族の偉人の伝記もなく、あるのは、中国史のウイグル語版とか鄧小平理論のウイグル語版とか流行小説のウイグル語版とか、英語や漢語の学習参考書とか、当局が「こういうものを読ませたら都合がよい」ものが大量に出回っているんだと思います。
 本当は、そっちの、ウイグル人自身がウイグル人に向けて表現したい・書き表したいものが発表できなかったり、ウイグル語ウェブサイトがお取り潰しになる所に、ウイグルの人たちは危機感や焦燥感を持っているのではないかと思うんですよね。
 そういう事情をすっとばして「ウイグルではウイグル語の本さえ読めない!」とセンセーショナルに煽れば、まぁ確かに衝撃的だし耳目を集めるし「そんな酷いことが起きてんの!」と同情を集めて漢民族への反感を高められるでしょうが表面的な事実自体がまったく反しているので、現地に旅行にでも行けば「えっ、本たくさんある、看板もウイグル語だ」ってことになるし、「ない」ものが「あった」ことで、「酷いことは起きてないじゃん」と思考ストップして、ひいてはウイグル支援にもマイナスなんじゃないだろうか、と思いつつリツイートされ続ける煽り発言を見ていたのでした。
 リツイートする人も、発言を見て「えっそこまで酷い状況なんだ」と驚いたら、そのまま目の前のPCなりiPhoneなりでちょっと検索するだけで、旅日記とか留学レポとか実際はどうなのかって別ソースがワサワサ出てくるのに、なぜそこで知的好奇心を満たさずに脊髄反射的にリツイートボタンを押すんだろう、と、ツイッター自体の構造的な傾向?までうだうだと考えつつ、どうつぶやけばいいんだ、と考えていたら、***さんまで言及されてたので、ちょっと声をかけてみた次第でした。長っ! ごめんなさい。
(2010/8/6)

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