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2010.11.20

ドキュメンタリー「THE SUN BEHIND THE CLOUDS」上映会(12/19)

 2008年3月にチベット全土で起きた中国当局への抵抗活動と流血を伴う武力弾圧とをチベット人自身の視線で追ったドキュメンタリーの日本初公開です。限定数ですがDVDの販売もあります。

THE SUN BEHIND THE CLOUDS上映会
日時:12月19日(日)開場18:30、開始19:00
場所:国立オリンピック記念青少年総合センター
   (東京都渋谷区代々木神園町3-1)
    センター棟4F セミナールーム(417)
    http://nyc.niye.go.jp/facilities/d6-1-38.html
料金:1000円(予定)
定員:300人(予約不要)
主催:SFTJapan

 なんだか最近チベット関係のドキュメンタリーってたくさんあるよね、どれも似たようなもんでしょ、もう飽きたよ、とお考えの向きに、映画のご紹介など。  とはいえ、私も作品自体を見たわけではなく、19日の初上映を楽しみにしている1人なので、映画レビューはできませんがご容赦下さい。
 あと、その映画なら知ってるよ! という方もご容赦下さい(新しい内容はありませんので…)。


 『The Sun Behind the Clouds: Tibet's Struggle for Freedom』(2009年/印・英/79分)は、チベット難民2世の映像作家テンジン・ソナム&インド女性リトゥ・サリン共同監督の、初の本格ドキュメンタリー作品です。
 テンジン・ソナム&リトゥ監督夫妻はこれまで、アーティスティックな映像作品や、歴史的事実をストーリーにうまく融合させた作品「ドリーミング・ラサ」(2005年)などで知られています。

 2009年に六本木ヒルズ森美術館で開かれた美術展「万華鏡の視覚~ティッセン・ボルネミッサ現代美術財団コレクションより」でも収蔵コレクションの一つとして監督夫妻の映像作品が紹介され、出展作家の1人として招聘され来日したこともあります。アートレビューはこちら(後半にあります)。
 ドリーミング・ラサのレビューはこの辺り(movie memo)を参考にして下さい。

 私は監督ご本人と面識はありませんが、会った人から聞いた話を総合すると、アート志向が強い芸術家肌の作家だ、という印象を受けています。2008年までは、正面からの(=ベタな)取り上げ方でチベット問題をテーマとするよりも、芸術や人間ドラマを通じてチベットを描き出していくアーティストなのだろうと感じていました。
 それが今回のドキュメンタリー制作に至ったのは、ひとえに、2008年3月の蜂起があり、1959年から半世紀という時期を迎えて、「チベット人として今自分がやらなければいつ誰がやるのか」という気持ちに駆られたのだろうと想像しました。
 その意味で、「THE SUN BEHIND THE CLOUDS」は、監督にとって、満を持してのドキュメンタリー制作だったのではないか――と思うのです。

 そのこともあり、製作中から「あのテンジン&リトゥ監督がついにチベット問題のドキュメンタリーを作り始めた」という報道を、チベット関係のニュースサイトでたびたび目にしました。
Dalailama_2  ダライ・ラマ法王へのインタビュー風景(顔の50センチくらい手前まで接近してカメラ回してたような……)や、Tenzinginterviewingwoeser 北京在住のチベット人女性作家ツェリンウーセルさんを訪ねてインタビュー撮影をしたことも、ウーセルさんご本人がブログで紹介しています。
(ブログ本文はこちら→被中国导演抵制的西藏纪录片拍摄花絮

 そして完成した作品は、2009年8月の韓国DMZドキュメンタリー映画祭(DMZは南北分断非武装地帯の意)出品を皮切りに、欧米アジア各地の映画祭に招待されました。2010年1月パームスプリングス国際映画祭で「Best of the Fest」授賞、同2月ムンバイ国際フィルムフェスティバルで「Silver Conch Award」授賞、同3月プラハ「ワンワールド国際フィルムフェスティバル」で最高賞の「Vaclav Havel Award and the Rudolf Vrba Award for Best Film in the Right to Know category」など、数多くの賞を受賞しています。

 このうち、パームスプリングス映画祭では、このTHE SUN BEHIND THE CLOUDSの正式招待に抗議して、中国の映画監督・陸川(チベットの自然保護活動を描いた『ココシリ』の監督)が参加をボイコットするなど、国際問題にもなりました。
http://www.chinanews.com.cn/yl/yl-yrfc/news/2010/01-07/2059588.shtml
(↑元ソースですが中国語)
http://blog.goo.ne.jp/dashu_2005/e/655ba95d302bcd73d0cdcc4b858889f1
(↑上記記事を受けた日本の方の個人ブログ)
 当時日本では、(陸川は有名な監督なので)中国の監督が国際映画祭をボイコットとは短く伝えられましたが、要因が「THE SUN BEHIND THE CLOUDS」であることまでは伝えられていなくて、残念だった記憶があります。


 と、まあ、こんな感じにけっこうな逸話のある話題作です。

 これまでチベット問題に関するドキュメンタリーは、BBC製作や、「チベット難民 世代を超えた闘い」(日本)など、チベット人以外の手で撮影されることが多かったので、「チベット人自身が表現を始めた/声を上げ始めた」という点からもぜひたくさんの人に見てもらいたいですし、ごくふつうの一般人が市井の1人の視点で撮影した「Leaving Fear Behind」とはまた違った、プロフェッショナルでガチンコのドキュメンタリーが観られるはずです。

 そして出演者は皆チベットの当事者たち。ブログ「チベットNow@ルンタ」(2010年3月30日)によると、タイトルの「The Sun Behind the Clouds」はガワン・サンドル(囚われのチベットの少女)ら、ラサ・ダプチ刑務所の獄中で抵抗歌をうたい拷問を受けた尼僧たちの歌のリンジン・チュキ(チベット@ルンタより) 一節からとったもので、映画のラストシーンで歌を歌う元政治囚の女性リンジン・チュキは、撮影当時はダラムサラのルンタハウスの奨学生寮に住み、英語とコンピュータの職業訓練コースで学ぶ学生だったそうです。
リンジン・チュキの証言
http://blog.livedoor.jp/rftibet/archives/51101231.html

 19日に映画を観た後で、もう一度、上記ブログを読んでいただければ、映画に登場する一人ひとりがそれぞれのつらい経験を背負っていることが実感できるし、それから、日本からの支援と顔が見える形で直接につながっていることも実感できて、身近に思えるのではないかと思います。ぜひ。

 以上、「The Sun Behind the Clouds」上映会が成功しますように、映画を見てなるほどこれがそうかとにやにやできそうな豆知識のご紹介でした。
 また、まだ時期は未定ですが、監督ご夫妻の来日計画も浮上中とのこと。つまり、実際に映画を見てみて、これはいい、ぜひ監督から直接話を聞く機会を持ちたい、という気持ちになったら、そのチャンスが巡ってこないわけでもない、ということです。そのためにも、実際に映画を一度見なくては。
 当日を楽しみにしています。

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