[メモ]シンボル
ここまでの流れは以下を参照。
http://togetter.com/li/72300
140字で端的に言うのは難しいので、ここをメモ代わりにして申し訳ないのですけど個人的な感想を書いておきます。システム開発の技術的分野は完全に門外漢なので、部外者の感想ってことでお願いします。
パソコンやウェブサイト上にチベット語の環境をつくろうという努力は、汎用OSが誕生した当時から20年以上にわたっていろんな方が努力して来られたことだと思います。特に、使用しているパソコン環境にとらわれず、異なるシステム間でもやりとりできるチベット語データを待ち望んでいた人は多いのではないでしょうか。
大谷大学チベットランゲージキット
http://web.otani.ac.jp/cri/twrp/outlk/jp/features.html
チベット語入力ソフト(サンボーダ)
http://www.nitartha.net/
カワチェン チベット語入力(上記ソフト日本語互換バージョン)
http://www.kawachen.org/sambhota.htm
たけださんのチベット語エディター
http://www.h5.dion.ne.jp/~pema/mwtib/index.html
ずぶの素人の感想ですが、十数年前は、パソコン上でチベット語を自由に読み書きできることは「学術研究者など特殊な技能を持った人が特殊な用途で使うために必要なこと」であって、一般人からの需要はない、一般人はできなくてもいい(=手書きでいい)、と考えられていた状況じゃなかったか、と思うんです。
その後パソコンとインターネット環境のすごい普及があって、でもチベット語はパソコンでも読み書き(表示と入力)がまだ不十分で互換性がなかったから、5年ほど前までは(つまり、Windows VistaとMac Leopardが出るまでは)チベット人同士でも英語でメールを書いたり中国語でメールを書いたりしなければいけない状況だったと思います。
さらにVistaとLeopardが出てきてPC上ではUnicodeによるチベット語環境が整った後も、携帯電話にはチベット文字が組み込まれていない(iPhoneのこれまでのバージョンでやや崩れた形で表示されるのを除く)状況は現在も続いていて、中国の携帯は漢字と英語だけが表示されるし、インドの携帯はディーバナーガリーと英語だけ、日本の携帯は日本語と英語しか表示できません。携帯電話のショートメールが普及しているインドや本土では、せっかくPCでの環境が整ってきただけに、携帯でもチベット文字の入力や表記ができる日を待ち望んでいる人も多かったと思うし、だから、24日リリースされたiPhoneの新OS「iOS4.2」に喝采を叫んだ関係者が多かったんだと思います。
(素人視点による経緯、ここまで。)
さて、チベット人自身が開発した、というふれこみのチベット語入力支援システム&フォント「モンラム・プェイ」をまとめているのは、南インド・セラ寺院の僧侶ロサン・モンラムさんです。
本土出身の亡命1世であるモンラムさんは、幼いころから機械いじりが好きで、ワイヤレスマイクをばらばらに分解してまた組み立てて遊んだりするような子どもだったそうで、本業の仏教の修行の傍ら、ITにも興味を持ちます。
お寺にパソコンが配備され、前を離れようとしないモンラムさんに「そんなに興味があるならやってみろ」ということでパソコンに触る機会を得たそうですが、モンラムさん、本土で育ってますので英語を勉強した経験がありません。画面に出てくるコマンドの意味も分からないし、どこを押せばどんな動作をするのかも分からず、お寺は市街地から離れていて、近くにパソコンショップがあるわけでもない。とにかく最初はありとあらゆるところを触って動かし、「なぜさっきはこう動き、今はこう動作したのだろうか」とチベット仏教の弁証法で論理立てて考えていくことで、まったくのゼロから約2年でパソコンの使い方を修得したんだそうです。(信じらんないけど、本人がそう言ったんだもん)
インターネットにつながったパソコンで世界をかいまみたモンラムさんが抱いた夢は「パソコンで全世界のチベット人が一つにつながり、チベット語で会話し、国境も山脈も超えてチベット語を次世代に伝えていくこと」。このへんは想像ですが、パソコンオタクのモンラムさんが、インターネットの凄さやウェブで知りえた情報を周囲のお坊さんたちに熱く語る様子が目に浮かぶし、セラ寺の伝統的な生活共同体の中で、モンラムさんがパソコンオタクとして局地的な有名人になったことは想像に難くありません。
その後、局地的有名パソコンオタク・モンラムさんは、チベット語入力システムの開発に携わってきたその分野の第一人者である外国人と知り合う機会を得たり、言語システム開発分野のプロジェクトからインフォーマントとして招かれたり、などの縁を得て、パソコンでチベット語の読み書きが自由自在にできるようになるべきだと考えているのは自分1人ではないのだ、という連帯感を得ました。「パソコンを使えるチベット人全員がチベット語も打てるように」と考えて、システムの無料ダウンロードサイトを作り、チベット政府がバックアップして盛大なお披露目もできました。今は、彼の弱みである英語力と総合的なIT技術の知識を充実させるために、興味ある分野を貪欲に吸収している最中だと思います。(確か現在はカナダだったかアメリカだったかで英語とITを学んでいるのではなかったかな)
彼が1人で最初から全部を作り上げたなんてことはあり得ないです。でも、素人目から見たときに、チベット人にとって、シンボルとしての彼の登場はとても大きな衝撃があったように思います。
パソコンなんて触ったこともないのに、本土出身でちゃんとした教育を受けてきていない(と難民社会の人たちは考える)のに、チベット人が、たった2年でパソコンを使えるようになり、「チベット語でメールが書けるよ、チベット人なんだからチベット語を使おうよ」と呼び掛けたのです。「自分たちにもやればできるはずだ」という意識と自覚と自信が生まれたんじゃないかと思います。
私はモンラムさんに会ったのはごくわずかな時間だけですが、それ以上に、モンラムさんを尊敬して「彼はすごいなあ」と感心し褒める人の話を聞きました。知り合いは「モンラムさんが呼び掛けてから、海外在住のチベット人たちがツイッターやメールでチベット語を使うことが流行している。ツイッターの自己紹介やスカイプのIDもチベット語表記にしはじめている」と教えてくれました。
実際に開発したかどうかではなく、その存在が周囲のチベット人に及ぼした影響をみるなら、決して小さいものではないと感じます。ライブドアの象徴がホリエモンだったみたいに(皆ホリエモンが1人でライブドアを作って運営してる訳じゃないことは知っていて、それでも象徴的存在として見ていたわけだし)、実態とは違うかもしれないけど、「PCシステムにチベット語環境を普遍化させよう」というキャンペーンにシンボル的な人物の存在がある、というのはそんなに敵視しなくてはいけないことかな、とも思ったのでした。




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