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August 2011

2011.08.31

[チベット・アムド] 2011年8月ラブランで何が起きているのか(下)

 新華社の記事では、ギャパンチェンの甘粛訪問は「8月9日から21日(うち宗教施設訪問が8月11日~20日)」と示されているだけで、どの寺院を何日に訪れたかという細かい日程は不明です。記事そのものも、現地入りして10日以上も動き回っているにもかかわらず、日程をすべて終えて現地を離れた22日になってようやく配信されています。
 これは要人の政治動向を伝える際に中国当局がとるオーソドックスな手法で、ふーんギャパンチェンて情報操作上は金正日だの胡錦濤並みの扱いなのかへーえ、と参考になるわけですが、とりあえずその、彼が甘南のどっかでなにかやっていた8月19日前後、ラブランエリアでは、相次いでチベット人が姿を消しました。

 [チベットNOW@ルンタ] 2008年に拷問証言のビデオを制作した僧ジグメ・ギャンツォ、再び拘束される(2011年8月24日)
 [チベットNOW@ルンタ] 続報:拘束されたラプラン僧院僧侶ジグメ・ギャンツォ(2011年8月25日)
 翻訳元→TCHRD(チベット人権民主センター)More Details of Monk Jigme Guri’s Arrest
 翻訳元→Free Tibet: Guri Jigme detained

 中国語で出てる情報から「チベットNOW」既出以外の情報を補足……と思ったんですが見当たらなかったので、拘束前後の状況を少し再掲します。まず「FreeTibet」(本部ロンドン)のリリースから抜粋。

ジグメはラブラン寺院から72km離れたツォエ(合作市)のホテル「桃園酒店」で身柄拘束された。
ジグメは、著名なチベット人歌手数人も参加した文化人の晩餐会(a cultural evening party)に招待されていた。ジグメは8月19日にツォエに到着した。
信頼できる筋によると、ジグメは8月20日午後2時から少なくとも21日明け方まで、私服警察十数人と軍人2人によってホテルの自室に閉じ込められていた。21日以降は所在不明。(Free Tibet.org

 TCHRD(チベット人権民主センター)ではこんな経緯。

8月19日に、ジグメはツォエの催し(festival)に、歌手シェルテンのような他の著名なチベット人とともに招かれていた。
催しにジグメが現れないので、弟子2人が師を探しに行った。(19日)午後7時ごろホテルに着くと、大勢の警官がいて、ジグメのいるはずの部屋に2人が立ち入ることは許されなかった。警察官は2人に「ジグメは中にいない」と言ったが、2人は室内から師ジグメの声を聞いた。彼は彼ら双方に「これ以上問題が起きる前にここを離れなさい」と言ったという。またジグメの弟子2人は、部屋の窓越しに、ジグメがベッドに横たわっているのを見たという。(TCHRD

 ここで気になるのは「19日に拘束され、少なくとも21日明け方までホテルに閉じ込められ、その後の消息は不明」という時系列の符合。ギャパンチェンの甘粛滞在は21日まで。ギャパンチェンが甘粛を離れるまで、身柄を押さえたその場で監禁状態に置き、その後……という図が思い浮かんだりします。
 「チベットNOW」24日記事には、「ギャパンチェンの訪問中、ジグメは当局から僧院を離れるよう命じられていた」という記述がありますが、英語・中国語ソースでは発見できずじまいでした。「不服従の英雄」として地元の人望厚い僧侶ジグメの身が懸念されます。

 チベット本土から顔と名前を明らかにして中国当局の拷問の実態を告発したジグメ・ギャンツォ(ジグメ・グリ)を筆頭に、ラブラン・タシキルは、間違っているものは間違っている、とはっきり声を上げる人たちが際立っています。
 2007年末、トゥンドゥプ・ワンチェンに協力して「Jigdrel - LEAVING FEAR BEHIND」を撮影したゴロク・ジグメもラブラン寺院の僧侶でした。2008年3月15日、前日のラサの血の弾圧に抗議して数千人が街頭へ(YouTube)。同4月9日には、当局が徹底的抑圧と思想教育の成功をPRするはずだったプレスツアーで、なお数十人が捨て身でカメラの前に進み出たのです(YouTube)。このうちの数人にはダラムサラでじかに会いました。でも、この映像の中の1人ジャムヤン・ジンパはこの直訴のあと10日間の拷問を受け、3年寝たきりの後、今年4月亡くなりました。

 今回のギャパンチェンのラブラン訪問にどこまでの意味があるのかは分かりません。
 経師ゲシェ・ジャンヤン・ギャツォ(サムチャ・ツァン・リンポチェ、全国政協委員)がラブラン寺院の仏教学院研究所長であり、歴代パンチェン・ラマとラブラン寺院は歴史的にも深いつながりがあります。本来、師と一対一で修行することが重要なチベット仏教の修行階梯のなかで、ラブラン寺院の学堂に入って教えを受ける段階になるはずだったのではないか、とみる人もいました。
 他方、ギャパンチェンをパンチェン・ラマと認めることを拒んだ先代のラブラン座主グンタン・リンポチェの経緯からも、ラブラン寺院にギャパンチェンを受け入れさせること自体が、中国当局のチベット仏教政策の「成功」であり、当局のメンツにかけても「盛大に大成功」しなくてはならないものだった、と推測する人もいました。
 とにかく、強制的「愛国愛教」キャンペーンへの不満や反感、タギェ(夏の馬祭り)の中止や強制など場当たり的命令への反感、その他の火種を抱えたラブランのチベット人たちに、表面上だけ盛大にギャパンチェンを歓迎「させ」、祝福「させ」ることが、党中央の最高命令として、省や地方政府の党委員会や公安局や宗教局に対して、上意下達の強大な圧力でふりかかっていたんではないのかなあ、と想像しています。
 上から「お墨付き」があると、武警や公安などの末端は往々にして暴走します。省の公安局員より県の公安局員、県の公安より「城管」という半官半民の街頭パトロールみたいな都市管理員のほうが荒っぽいしめちゃくちゃやる、という図式があります。

 そして8月29日には、新たにもう一人、若い女性歌手も(20日時点で)行方不明になっていた、という情報が伝わりました。

 [チベットNOW@ルンタ] アムドの有名な女性歌手ラルン・ツォ 拘束(2011年8月29日)

 VOT(ボイス・オブ・チベット中国語)から抜粋します。

 【VOT(ボイス・オブ・チベット)8月27日】チベットのアムド・カンロの若い女性歌手ホルツァン・ラルン・ツォが8月20日、公安に突然身柄を拘束された後、行方不明となっている。
 インド南部デプン寺院の僧侶グンドゥン・プンツォクがVOT記者に明らかにしたところによれば、8月20日、中国共産党の公安がツォエで彼の経師ジグメ・ギャンツォを礼状なしで拘束したほか、チベット人女子学生で若手歌手のホルツァン・ラルン・ツォも拘束している。
 グンドゥン・プンツォクは次のように述べた。「今月20日、ツォエの『雪域歌劇院』で歌舞晩餐会が催され、主催組織は現地でよく知られた歌手を招いた。このうち、招待に応じて晩餐会参加のため来ていた若いチベット人歌手ホルツァン・ラロン・ツォは当日(の昼間)、中国共産党の公安に拘束され、晩会に参加することができなかった」
 拘束されたホルツァン・ラロン・ツォは今年二十数歳、チベットのアムド・カンロ、サンチュの人で、拘束前は成都市のある翻訳センターで実習していた。

 拘束時の詳細な経緯がやはり不明で、更に注意深く続報を待ちたいのですが、彼女の名のホルツァンはラブラン地域サンチュの村(郷)の名前。彼女は「ホルツァン出身のラルン・ツォ」と名乗って歌っていることになります。ふるさとへの深い愛と誇りを感じます。(もう1人同姓同名のラルン・ツォという歌手がいて、わかりやすく区別するために出身地の名前をつけてるって可能性が高いけど)
 それで、前後して同じ場所で同じように拘束されたジグメ・ギャンツォ(ジグメ・グリ)との共通点を考えるに、やはり気になるのは「サンチュの人」という点。サンチュの人が、8月19日に、サンチュを離れてツォエで晩餐会の招待を受けていた、ということが、何かそんなにも公安の逆鱗に触れる、もしくは、「党にそむく行為」の口実にされるようなことでもあったのでしょうか……?


以下資料保存のための記事本文コピー

西藏安多女歌手沃仓拉龙措被拘押
发布者:西藏之声 - 8月28日
西藏安多女歌手沃仓拉龙措被拘押
【西藏之声8月27日报导】西藏安多甘南州青年女歌手沃仓拉龙措于本月20日被中共公安人员突然拘捕后,目前下落不明。
印度南部哲蚌寺僧人更敦平措向本台驻地记者介绍说,本月20日,中共公安在甘南州合作市境内随意拘捕他的经师晋美嘉措之外,还拘押了西藏女学生、青年歌手沃仓拉龙措。
更敦平措表示,(录音)本月20日,在西藏安多甘南州合作市雪域歌剧院中举办了一个歌舞晚会,主办单位邀请当地部分知名歌手参与,但其中受邀参与晚会的西藏青年女歌手沃仓拉龙措在当天被中共公安拘押,未能参与晚会。
这位西藏青年女歌手遭捕后,家人陷入担忧。更敦平措说,(录音)沃仓拉龙措被拘捕后,她的家人非常担心她的处境,并希望她能早日获得释放。
被拘捕的西藏青年女歌手沃仓拉龙措,现年20多岁,是西藏安多甘南州夏河县人,被捕前曾在成都市一家翻译中心实习。
另据西藏流亡政府网站消息,去年4月14日,在西藏康区结古多(玉树)发生强烈地震,导致当地藏人遭到极大的灾难和损失后,中共政府以重建灾区为名,实施着违背藏人意愿的建筑工程,很多土地被当局强行没收或挪用,引发当地藏人的强烈抗议与不满。
消息指出,目前大量汉人已迁移到西藏结古多夏渠库(音译)等地,肆意占用当地藏人的农田,使当地藏人的生活处境陷入困境。此外,这些移民汉人正在发布广告招收种地员工,企图把汉人继续引进藏地,并兴建汉人长期居住区,导致千百年来土生土长的藏人开始失去家园和生活来源。
元リンク:http://www.vot.org/?p=371

【RFA普通話2011年8月29日】另据《西藏之声》星期六报道,甘肃省甘南州青年女歌手沃仓拉龙措于本月20日被公安拘捕,目前下落不明。报道称,甘南州合作市也拘捕了她的经师晋美嘉措。当天他们原计划参加该市雪域歌剧院举办的歌舞晚会。沃仓拉龙措被捕后,她的家人非常担心其处境,并希望能早日获释。20多岁的沃仓拉龙措是夏河县人,曾在成都市一家翻译中心实习。 格桑表示,在官方电视中出现的藏族歌手,均是在官方刻意安排下,唱的都是歌颂共产党的汉文歌曲,但这些歌曲不被多数藏民接受:“在藏族的民众当中并没有市场。反而唱藏族歌曲,有些真正弘扬藏族文化的深受藏族民众欢迎的受到打压。西藏有很多歌手,原来拉萨的歌手康区的或者青海的很多歌手,有些被判了10多年的都有,当局都归类为民族分裂的范畴里面来进行打压。” 以上是自由亚洲电台特约记者乔龙的采访报道
元リンク:http://www.rfa.org/mandarin/yataibaodao/p-08292011093638.html

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2011.08.30

[チベット・アムド] 2011年8月ラブランで何が起きているのか(上)

 アムドのラブラン・タシキル(ラブラン寺院)はカンロ(Kanlho/甘南:中国の区分では甘粛省南部)地域の中心的な大僧院で、蘭州など中国の都市からのアクセスもよい観光名所でもあります。クンブム(タール寺院)と並んで1980年代後半から当局による商業観光地化がいち早く進み、今となっては胸の痛む情景を見ることも多い場所ですが、この8月、その地からのニュースがいくつかありました。460769001  チベット本土から伝わってくる話は、断片的だったり時系列も前後していたりすることが多く、時として、注意深く小さな情報をつなぎあわせる(マニアックともいう)作業が必要となります。同時期、8月15日にカムのタウで若い僧侶が焼身自殺をする悲劇があり、タウで何が起きているかの情報も整理したいのですが、個人的に思い入れある場所でもあり、先に可能な範囲でラブラン・タシキル関連をざっくりと追いかけておこうと思います。


 まずは「中国当局はものごとをこのように見せたがっている」ということを示す、8月22日付の新華社記事を。
 パンチェン・ラマって2人いてね、という前提は省略、これは中国当局発の記事なので登場するパンチェン・ラマはもちろんチベット人言うところのギャ・パンチェン(中国のパンチェン)。区別するため地の文ではギャパンチェンと書き分けてみます。ちなみに「加班禅」と中国語表記した場合の「加(ジィア)」は中国語で「ニセ物」の意「假(ジィア)」の掛詞ともとれますが、ここでは単にチベット語をカタカナ表記しています。
 記事は長いうえに政治的言い回しが散見されてて血の気の多い人は最後まで読めないかもしれないので、注釈を訳末ではなく途中に挟んでみました。却って読みずらいという人には申し訳なく。

班禅额尔德尼·确吉杰布到甘肃参观学习并举行佛事活动(パンチェン・エルデニ・ギェルツェン・ノルブが甘粛で視察と仏教法事)
新華社電2011年8月22日
http://news.xinhuanet.com/politics/2011-08/22/c_121894067.htm
 【蘭州8月22日王衛記者】 8月9日から21日まで、パンチェン・エルデニ・ギェルツェン・ノルブは甘粛省蘭州市および甘南州で視察と仏教祭事を行った。これは2003年以来パンチェンの2回目の甘粛訪問である。日程のなかで、パンチェンは仏教学の深い造詣と愛国愛教の心情をつまびらかにし、ありとあらゆる僧侶俗人の熱烈な歓迎と心からの尊敬を受けた。

 まあ、「新華社が記事にしたこと」=「中国当局が『これが事実だ』ということにしたい主張」はこのリードに尽きるわけですが。「パンチェンは仏教に詳しいよ」「愛国愛教の心情があるよ」「ありとあらゆる人が尊敬してるよ」この3点。ここ重要です。
 「愛国愛教」は中国当局の政治キャンペーンの一つで、意味は「国家を愛し、宗教を愛する」=「中華人民共和国に忠誠を誓うことと、仏教に帰依する信仰心を両立させるべきだ」というもの……というのはもちろん建前で、実態は、「国家への忠誠心が阻まれるような宗教信仰はケシカラン」(→活動制限の口実へ)、「国家への忠誠心は宗教信仰よりも優先される」(→活動停止の口実へ)、というものです。
 愛国愛教という耳ざわりのよい語句を借りた宗教抑圧は、チベット仏教に対してよりも、ムスリムやキリスト教徒に対してより早期から、より強力に、行われています。

 蘭州で、パンチェンは中国石油蘭州石油化学会社及び中国科学院近代物理研究所、西北民族大学楡中キャンパスを視察し、解説に真剣に耳を傾け、時に詳しく質問した。彼は、学校がますます発展し、社会に役立つ人材をより一層育成していることを祝った。また、甘粛省仏教協会のある文殊院では仏教法事を催した。

 11日から20日まで、パンチェンは、(甘南州)サンチュのラブラン寺院やクツェ寺、ルチュの新シツァン寺、モリ寺、ツォエのツォエ寺などのチベット仏教寺院を相次いで訪問、法要や法話、祝福を与える儀式を執り行った。各地からの群集が次々に押し寄せ、手にカターを捧げ持ったり、「ルンタ」を撒いたり、「サンを焚きあげ」るなど、チベットの民族色豊かな一連の儀礼で熱烈に歓迎した。各寺院も一様に、最上級の宗教儀礼でパンチェン訪問を受け入れた。

 ラブラン寺院では、グンタン・ツァン、デワ・ツァン・ナンチェンと面会し、医学院や印経院(経典製版所)のための開眼供養を行い、顕教学堂で論じられていた仏教学弁論試験を観覧し、本堂で僧侶のため読経した。サンチュでは、パンチェンは彼の経師(経文に詳しい高僧)ジャムヤン・ギャツォを訪問し、パンチェン10世の母親及び高齢の高僧代表やラブラン寺院代表と会見した。カンロでの10日間の間に、パンチェンは延べ5万人の僧侶と俗人の頭をなでて祝福を与えた。

 どうでもいいような施設名や企業名からやけに細かい寺院名、さらにはトゥルクや高僧の名前をずらずらと並べているのは、私みたいなマニアックなチベット好きの興味に応えるため……ではなく、誰と誰と誰がギャパンチェンに支持を表明したよ、という、圧力というか言質ですね。あーこわ。日本の新聞記事ならこんなとこはばっさり削られ「具体的情景描写をワンシーンと関係者コメント追加!」だろうなと思うと、これはやはり「記事」ではなく、「中国当局にとって『これが事実なのだ』という主張」、だと分かりやすいかもしれません。(え、分かりにくい?)
 感慨深いのはグンタン・ツァン・リンポチェでしょうか。2000年に亡くなった(殺されたと信じるチベット人も多い)先代のリンポチェについてはこちら(チベット・インフォメーション・ネットワーク)。今回ギャパンチェンが会見した7世についてはこちら(チベット式2005年8月)
 それを思うと、切れ者でやり手と名高いラブラン寺主ジャムヤン・シェパ(ジャムヤン・リンポチェ)の名前が出ないのが気になるところ……。(「ラブラン寺院代表」とだけ言及されているのは、ジャムヤン・シェパが出てこなかったから……?)

 カンロ(甘南州)の宗教関係代表者との会談で、パンチェンは「8年の時を経て再度カンロに来たことで、宗教を信仰する幅広い一般民衆が充分に宗教信仰の自由を享受していることを感じた。これは共産党と国家の配慮(による恩恵)と切り離せないものであり、チベット仏教界の人たちは、法律を学び、理解し、守り、「愛国愛教、護国利民(国家愛と宗教愛は国家を護り国民を利する)」の求めに照らして、祖国の統一と民族の団結を維持し、絶えず仏教修行を続け、求めにかなう一僧侶として、更に信徒民衆に仕え、チベット仏教と社会主義社会をマッチングさせる努力をしてほしい」と述べた。彼はまた、「歴代パンチェンラマを手本として、代々の愛国愛教の栄えある伝統を継承し、仏教を中心とする各方面の知識を更に一歩深め、祖国繁栄と仏法隆盛のために貢献したい」と表明した。

 ルチュで、パンチェンは「遊牧民定住プロジェクト」定住居を見学。全員が広く明るい新築住居に住み始めているのを見たパンチェンは喜び、「共産党と政府は民族地域の発展に十分に関心をもっており、特に農牧民の生活に十分な注意を払っている。あなた方がまじめに生産力を向上させ、一刻も早くまずまず豊かな生活水準に至るよう願っている」と話した。ツォエで、パンチェンは甘粛民族師範学院を参観し、チベット、回、漢などの民族の特別困窮世帯や生活保護世帯に寄付した。
 甘粛省の陸浩・共産党委員会書記、劉偉平・甘粛省長がパンチェンに面会し、彼に甘粛省の経済や社会の発展状況を紹介した。

 ギャパンチェンの言葉はすべて「中国当局が彼にこう言わせたい内容」であると考えると、非常に分かりやすいです。パンチェン・ラマ10世の業績についても巧妙にすり替えられていることが分かります。そもそも「歴代パンチェンラマを手本に共産党の愛国愛教の伝統を継承」するって(爆笑)、作文した新華社の王衛さんはいったいパンチェン何世の時代から中国共産党政府があったと思っているのか小一時間(略)。本当に「先代パンチェンを手本に」したらと思うといろいろ考えちゃって胸が詰まります。

 上記記事のTVニュースの動画はこちら

 ちなみに、現地に何度も行ってる人は、動画を見て、「ショボい」と一言。
 「本当のリンポチェが来たときのチベット人の盛り上がりったらこんなもんじゃないよ、押すな押すなの人込みをかき分けながら進むってなもんよ。ラブランの冬の大タンカ開帳より人が少ないんじゃない?」「い…一応、途切れず人の列が続いてるじゃん?」「人垣の厚みがぜんっぜん違うって!」
 というわけで、いくら「ありとあらゆる僧俗民衆が熱烈な歓迎」と文章表現を盛ってみても、映像はシビアだね……という結論ではあるのですが。

 さて、ギャパンチェンのラブラン寺院訪問がどんな状況下で行われたかは、新華社の記事が出る10日前のBBC記事からも類推できます。

班禅到访前外国人被令离开夏河(パンチェン訪問を前に外国人がサンチュを追い出される)
BBC中国語2011年8月12日
 中国当局は目下、中国甘粛省西南部のサンチュ(夏河県)に外国人観光客が立ち入ることを禁じている。信頼できる筋によると、中国当局が選定したチベット仏教指導者パンチェン・ラマが近く現地を訪問するとみられる。
 ロンドンにあるチベット人権組織が8月11日発表した声明によると、パンチェン・ラマが数日中にサンチュ(夏河県)を訪問する見込みとなり、中国当局は現在、外国人に現地を出ていくよう求めている。
 AP通信によると、夏河県旅行局の李職員は、彼らは既に、(入域)禁止令が通達される前に夏河県に入った外国人に対し、当地を離れるよう通知したと話したという。AP通信はさらに、同県内のあるホテル従業員の話として、県公安局と旅行局から既に外国人を受け入れてはならないという通知を受け取っている、と伝えている。
 ロイター通信の記者が現地の多くのホテルに電話取材したところ、パンチェン・ラマがまもなく現地を訪問することと、当局が外国人に出ていくよう要求している情報は事実だと判明した。
 夏河県はチベット人が主な住民の地域で、また、チベット仏教ゲルク派の著名寺院ラブラン寺院がある。これまで夏河県では2008年3月にチベット人の騒ぎがあり、ダライ・ラマ14世を支持する仏教僧侶や他のチベット人が抗議デモを行い、警察や軍隊と対峙した。
 パンチェン・ラマはチベット仏教第2位の人物で、ダライ・ラマに次ぐ地位になぞらえられる。夏河訪問を予定しているパンチェン・ラマは、1995年に中国側が選定したほうである。ダライ・ラマは当時、別の男児をパンチェン・ラマとして選んでおり、多くのチベット人が中国当局の選んだほうのパンチェン・ラマの地位を認めていない。
原文リンク= http://www.bbc.co.uk/zhongwen/simp/chinese_news/2011/08/110812_xiahe_panchen_visit.shtml

 「目撃者」たる外国人をすべて追い出さなければ安心して(?)実施できないギャパンチェン訪問とはいったい。今年は自治区でも「17条協定60年」(チベット平和解放60年)の記念式典だという理由で、外国人観光客は1カ月にわたって締め出されていました。

 以下はよた話として聞いてください。こんな話もあったらしいよ、という程度の噂話です。

 別の人によると、「2003年(の初訪問時)はもっとアレだった」んだそうな。
 「当局が無料バスを仕立てて、近隣の住民を無料でというか無理やりバスに乗せてラブラン寺院に向かわせるんだけど、皆イヤイヤだから、手前のツォエあたりで『ちょっと用事が』なんて言い訳して降りちゃう。それで結局、全然人が集まらなかった」。
 つまり8年を経ての今回、中国当局は、是が非でも「チベット人民に広く受け入れられ、敬愛される、若く人望溢れるパンチェン・ラマ」を演出しなければいけなかったのだと思われるのです。なんせ中国仏教協会副会長。肩書きならチベット仏教どころか中国仏教界のナンバー2にまつりあげているんですし。

 そこでどんなことが繰り広げられたかというと、また別の人の話。
 集落全戸の、家族全員の名簿を手にした住民委員会(共産党の下部組織)が1軒1軒を回り、誰と誰がギャパンチェンの祝福に行ったか、自宅に残っている者はいないか、名前をチェックしての強制動員。片田舎の、どこの家が何人家族かも村じゅうすべて筒抜け顔見知りの小さな集落まで、1人1人名簿チェックされて、有無を言わさず連れ出された、という話。休暇で遠くの学校の寄宿舎から戻ってきた、とか、具合の悪い家族を見舞いに来た、とかの事情もいっさい無視で「とにかく全員行け」だったと。特に厳しいのは僧侶で、1人も欠けることは許されない勢いだったと。地元のチベット人たちは、「お坊さんはお坊さんだよねえ」「パンチェンじゃないけどねえ」と言い合って、カタを準備して、敬意を表しに行った、んだという話。

 以下蛇足。
 さて、そうすると、「8年ぶりに再訪して、民衆が宗教信仰の自由を充分に享受していることを感じた」というギャパンチェン君のコメントったらブラックジョーク過ぎて凄すぎます。
 つまり、8年前に比べたら遥かにたくさんの人たちが、行く先々に駆けつけて出迎え、カタを捧げてくれたことがありありと感じられたからこそ、「8年前より宗教信仰の自由度が高まった」というニュアンスの言い回しになったんでしょう。そこまで言わせるなんて、8年前って、よっぽど、子供心が傷つくくらい、人が来てくれなかったんだろうな……ううっ。
 とはいえ、トゥルク英才教育の対象の最終候補に選ばれるくらいではあるんだから、ギャパンチェン君自身、相当の切れ者のはず。きちんと仏教を修めていれば、祝福を受けにくる人たちが、強制的に動員されて来ているのか、自ら喜んで駆けつけてきたのかなんて一目で見抜けてしまうと思うのです。(というかその、素人目で動画みたってゴニョゴニョだしさ…)
 であればこそ“宗教の自由”なんて敏感用語は胸の内にしまってスルーしておけばよさそうなものを、敢えてひとこと言いたくなって、『宗教の自由を享受している(ようにうわべだけをとりつくろう政治力が行使されている)状況を感じましたが?』というメッセージを含めてるんだったら……怖ぇええ。記事中の彼の発言の中で、8年ぶり再訪の感想のくだりだけが、彼自身の言葉っぽいんだよね。その他は当局の公式見解を一字一句なぞってるだけだし。
 ギャパンチェン(ギャナク・パンチェン)がナクポ・パンチェン(黒パンチェン)になる日が来るのかも……?(なんか分かりにくいダジャレ書いたごめんなさい)

 閑話休題、ラブランで何が起こっていたかの本題は、冗談にできない話になってくるので記事を分けて「下」に続きます。


(以下、資料保存のための原文コピーペースト)

班禅额尔德尼-确吉杰布到甘肃参观学习并举行佛事活动
2011-8-22 16:55:56

  新华网兰州8月22日电(记者王衡)8月9日至21日,班禅额尔德尼·确吉杰布到甘肃省兰州市和甘南藏族自治州参观学习并举行佛事活动。这是自2003年以来班禅第二次到访甘肃。一路上,班禅展现出的高深佛学造诣和爱国爱教情怀,受到广大僧俗群众热烈欢迎和由衷爱戴。

  在兰州,班禅前往中石油兰州石化公司、中科院近代物理研究所和西北民族大学榆中校区参观学习,认真倾听讲解,不时询问有关情况。他祝福学校越办越好,为社会培养更多人才。并到甘肃省佛教协会所在地文殊院举行佛事活动。

  11日到20日,班禅先后在甘南藏族自治州夏河县拉卜楞寺和科才寺、碌曲县西仓新寺和毛日寺、合作市合作寺等藏传佛教寺庙讲经说法、摸顶赐福、祈福祝愿,各地群众纷纷赶来,以手捧哈达、抛撒“龙达”、“煨桑”等一系列富有藏族特色的仪式热烈欢迎。各寺庙均以最隆重的宗教礼仪迎接班禅的到来。

  在拉卜楞寺,班禅走访了贡唐仓、德哇仓囊欠,为医学院、印经院等开光,观看闻思学院辩经考试,并在大经堂为僧人讲经。在夏河县,班禅看望他的经师加羊加措,会见十世班禅母亲代表以及年老喇嘛和拉卜楞寺的代表。在甘南藏族自治州的10天里,班禅共为5万多名僧俗群众摸顶赐福。

  在与甘南藏族自治州宗教界代表人士座谈时,班禅说,时隔8年再次来到甘南,感到广大信教群众充分享有宗教信仰自由,这些都离不开党和国家的关怀,希望藏传佛教界人士要学法、懂法、守法,按照“爱国爱教、护国利民”的要求,维护祖国统一和民族团结,不断提高佛法修行,做一名合格的僧人,更好地服务信教群众,努力使藏传佛教与社会主义社会相适应。他表示将以历代班禅大师为榜样,继承他们爱国爱教的光荣传统,进一步学好以佛学为主的各方面知识,为祖国繁荣、佛法昌隆作出贡献。

  在碌曲县,班禅考察了游牧民定居工程定居点。看到大家住进了宽敞明亮的新居,班禅高兴地说:“党和政府十分关心民族地区的发展,特别是对农牧民的生活十分关心。希望你们认真搞好生产,尽快致富奔小康。”在合作市,班禅参观了甘肃民族师范学院,并向藏、回、汉等族特困户和五保户捐款。

  甘肃省委书记陆浩、省长刘伟平看望了班禅,并向他介绍了甘肃经济社会发展情况。


班禅到访前外国人被令离开夏河
更新时间 2011年8月12日, 格林尼治标准时间10:18
中国当局目前禁止外国游客进入位于中国甘肃省西南部的夏河县,据信由当局选定的藏传佛教领袖班禅喇嘛将到那里访问。
在伦敦的一个西藏人权活动组织星期四(8月11日)发表声明说,班禅喇嘛将在未来几天访问夏河,当局正在要求外国人离开。
美联社援引夏河县旅游局一位李姓官员的话说,他们已通知在禁令下达之前来到夏河县的外国人离开这里。
美联社还引述夏河县一家酒店工作人员的话说,他们接到县公安局和旅游局的通知,不能接待外国客人。
拉卜楞寺
路透社记者也打电话给当地的多家酒店,证实了班禅喇嘛即将到访和当局要求外国人离开的消息。
甘肃省夏河县是一个以藏民为主的地区,也是著名的藏传佛教格鲁派寺院拉卜楞寺的所在地。
夏河县曾在2008年3月发生藏民骚乱事件,忠于达赖喇嘛的佛教僧侣和其他藏民举行示威,同警察和军队发生对峙。
班禅喇嘛是藏传佛教的第二号人物,仅列达赖喇嘛之后。即将前往夏河访问的班禅喇嘛由中国方面在1995年选定。
由于达赖喇嘛当时选择另一个男孩作为新的班禅喇嘛,许多藏民不承认中国当局选定的这位班禅喇嘛的地位。

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2011.08.20

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 チベット語講座の受講者を募集しています。

 ●チベット語を学んでチベット支援!! 
 ただのチベット語教室ではありません。(もちろん無料でもありません・笑)
 開講のきっかけは、チベット語を学べる環境にないチベット人のためのチベット語クラス開催資金を募っていることからです。チベットでのさまざまな事情と、日本国内でも大災害が起きた状況から、単に「寄付を」とお願いすることが難しいので、講師がチャリティーで講座を開き、交通費など経費以外の収益を支援に充てることにしました。
 この機会にチベット語を習ってみたいという方、よろしくご協力お願いいたします。

 ●開講予定日
 平日(月・木・金)夜のクラスと、土曜午後のクラスを予定します。
 「募集中」の時間帯は希望者が揃い次第、開講が可能です。希望人数などはここで随時更新します(定員満了後は更新停止)。グループレッスンは2~3人まで。個人レッスンは申し込み順で随時開講可能です。

月曜火曜水曜木曜金曜土曜日曜
14:00~15:30 初級クラス募集中
16:00~17:30 入門クラス募集中(あと1人で開講)
19:00~20:30 中級クラス募集中(あと1人で開講) 初級クラス開講決定(空き1人) 入門クラス募集中(あと1人で開講)

入門クラス募集中(あと1人で開講)

(2011年8月23日現在)

 ●講師
 三浦順子さん(チベット語翻訳・通訳)

 ●受講レベル
 まったくの初心者から、中級レベルまで。

  • 入門:まったくチベット語を習ったことがない人。チベット文字の読み方からスタート。
  • 初級:チベット文字を見て発音ができる人。以前習ったけど、ほとんど忘れてしまった…という人。
  • 中級:チベット語文の読み書きと文章の組み立てができ、さらに文章を読んだり会話を習いたい人。チベット語学習歴1年以上の人。

 ●場所
 新宿東口
 (JR「新宿」/西武新宿「西武新宿」/地下鉄「東新宿」からいずれも徒歩6~9分)

 ●受講料
 グループレッスン:月8,000円~(週1回1.5~2時間、月4回)
 個人レッスン:月10,000円~(同上)
 講師交通費など必要経費以外はすべてチベットの母語教育支援に贈られます。そのため、上記受講料を最低額とさせていただきますが、それ以上払いたい人はぜひどうぞ(^^)

 ●問い合わせ&申し込み
 講座専用メールアドレス speaktibetan@gmail.com に、

  1. お名前
  2. 連絡先(住所、電話番号、メールアドレス、)
  3. 希望する受講曜日と時間
  4. 参加希望クラスとチベット語学習歴

をご記入のうえ、まずはメールでお問い合わせください。講座開講場所の地図など、詳細を折り返しご連絡します。

 ●その他
 □体験レッスン
 有料で授業見学または体験レッスンが可能です。
 1回2500円
 ※チャリティー講座なので無料体験制度はありません。いただいた体験レッスン料は正規受講料と合わせ、チベット支援費となります。こちらも、上記メールアドレスに事前にお問い合わせ、ご予約ください。

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