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2012.01.27

ダンゴ、セルタの抗議活動に関する中国側発表(補足)

 23日以降のチベットの事態急変に、べそかきながら情報を集めています。
 個人的には2008年3月当時に近い限界状態まで来ているんですが、考えてみたら、あのときはまだツイッターやっていなかったし、微博もなかったし、facebookも登録だけはしたけど放置状態で、ダラムサラから届くメールにひたすらおろおろしていたような。

 ルンタ(表)のtonbaniさんが、チベット語と英語から日本語への情報ルートをつくっているのを、「ルンタの裏」であるうらるんたは中国語ソースで確認、補完できるもので補足したりしているわけですが、26日のブログ「ダンゴ、セルタ事件に関する中国側の発表等」で私の訳を紹介していただきまして、多少の補足をしておこうと思います。

 「チベットNOW」のほうで最初に紹介されている1月24日の新華社電ですが、中国当局の公式見解であるところの新華社報道は、これが現れるより以前の23日当日に、中国評論新聞(香港か台湾のメディアと思われる)などが引用する形で流れ、しかし本家新華社サイトでは確認できなかったバージョンがあります。報道という名の当局発表が流れた時系列ではこちらが先になります。単純な翻訳だったので23日当日に訳してGoogle+に上げていましたが、転記しますのでこちらも参考にしてください。

https://plus.google.com/u/0/117022253692448940644/posts/ffcrk5HKDBo

四川甘孜州炉霍派出所が襲撃される もめた1人が死亡
2012-01-23 22:34:24
【中国評論新聞社北京1月23日電】 四川省甘孜州炉霍県政府が把握した情報によると、23日に現地で1件のもめごとが起こり、現地の派出所で襲撃と打ち壊しが起こる過程で、もめごとを起こした1人が死亡した。
新華社通信によれば23日、ある人が甘孜州炉霍県のバスターミナルの三差路でビラを貼りだし、「ここで僧侶が焼身抗議する」というデマをまき散らした。正午過ぎから数十名の僧侶や俗人が次々にこの三差路に集まり始め、一部は棍棒や石などの物品を手にし、少なくない野次馬も集まってきた。
14時近く、集まったうちの一部が新都鎮公安派出所を襲撃、破壊行為を始めた。現地の公安人民警察はただちに法律にのっとってもめごとの制止活動を行い、16時ごろ、事態はおおよそ鎮静化した。
公安人民警察が法律にのっとってもめごとの制止活動を遂行する過程で、警察官5人が負傷し、もめごとを起こした1人が死亡した。
現時点では、炉霍県の市街地の秩序は既に正常に回復している。現地の民衆は、派出所を襲撃した違法な暴力行為を激しく非難している。

<注目点>

  • こんな短い文に「法律にのっとったもめごとの制止活動」が2回も。→法に基づいたのだ、というのが当局の「主張」(=この記事で印象づけたいこと)であり、「法治を超えている」「やりすぎだ」と突つかれたくないのだ、ということがわかる。
    →支援する側は「法的根拠もないのに任意で身柄拘束して人権侵害だ」「非暴力デモに発砲するのは人倫的にも国際人権規約上も間違いだ」と言い続けたらいいんだ、ということもわかる訳で。
  • 「一部は」「~~などの物品を手にし」のあいまい描写→武器を持っていたと印象づけたいが銃や刀とは書けず、曖昧に「物品を持ってた」と書くしかなかったくらい全員が徒手空拳丸腰だった、素手の集団だった、ということがわかる。
    (チベット服では伝統的装飾的に帯刀するわけで1人でもそれ持ってたら「持ってた」「持ってた」書き立てるでしょう、それが書けないんだから相当の素手)
  • 「現地の民衆は暴力行為を激しく非難している」という唐突な一文(=「民意は施政者を支持している」という裏付けのない主張)→当局は「民衆暴動だ」「住民の抗議だ」と思われたくない=実際には地域の住民全体が当局に対して不服従の意思表示をした、ということがわかる。
    (中国王朝の伝統的な国家観では「住民に支持されていない」王朝はいずれ滅びる。またチベット統治において「民主的手法はつかっていないけれど『解放』され経済発展した人民は満足している」というポーズがとれないと西側に対して言い訳が苦しい)
    →実際は「チベット人住民は中国当局の施策を何から何まで支持していない」(=当局にとり「指摘されたくないこと」)。
  • これまでの決まり文句『ダライ一派に扇動されたごく一部の僧侶』という表現がない→23日の抗議は、相当に幅広い社会階層のチベット人が立ち上がったということが読み取れる。

(原文)
四川甘孜州爐霍派出所遭打砸 一鬧事者死亡
http://goo.gl/IVq09
2012-01-23 22:34:24   中評社北京1月23日電/四川省甘孜州爐霍縣政府獲悉,23日當地發生一起鬧事事件,一名鬧事者在衝擊、打砸當地派出所的過程中死亡。
  新華社報道,23日,有人在甘孜州爐霍縣車站三岔路口處張貼標語,散佈將有僧人在此自焚的謠言。
  中午12點以後,開始有數十名僧眾陸續在該路口聚集,部分人手持木棍、石塊等物品,引起一些民眾圍觀。
  14時許,部分聚集者開始衝擊、打砸新都鎮公安派出所。當地公安民警迅速依法制止鬧事行為,16時左右,事態基本平息。在公安民警依法制止鬧事行為的過程中,5名民警受傷,1名鬧事者死亡。
  目前,爐霍縣城秩序已恢復正常。當地民眾強烈譴責打砸派出所的違法暴力行為。

ブログ「チベットNOW」に引用された部分で、「持ち物ディテールが『刃物を持っていた』にグレードアップ。」と皮肉ったのは、23日にこの記事がどこかで(海外媒体向けに?)出た後、24日に中国国内からも読める形で配信されたバージョンでは、23日の記事では登場していなかった「刃物」が後から出てきたからです。

また、「この他の記事もあるとして…」のくだりは、tonbaniさんから、BBCなど海外媒体が「新華社によると」として引用している部分に、とても信じがたいトンデモ記述があることについて訊ねられたことに答えたツイートの転記ですが、これは23日のダンゴに関する記事ではなく、24日のセルタに関する記事に出てくる表現です。
セルタに関する新華社記事もまた、不思議な現象(?)が起きており、当初は国内向け媒体でも報道され、微博でも盛んに転送されていたのですが、海外媒体の報道を引用して紹介している、BBC中国語版の編集長李文と名乗る人の発言(25日18:24)によると

Weibo20120126_2

李文「たった今同僚から教えられたんだが、新華社の関連報道が神秘的なことに現在消えてなくなっている。私も検索してみたが、本当に見つからなくなったみたいで、英語版の報道さえなくなった」
チベット人「23日ダンゴ、24日セルタ、チベット各地は高度な“安定”状態にあるわけだ」
著名チベット人大学教授「(目を白黒させてぽろっと涙をこぼす絵文字)」

(※25日夕方―微博の時間表示は日本より1時間早い―に私は一度この書き込みを目にしていて、その時は、「この発言は削除された」と表示されている部分に引用発言が表示されており、23日と24日にカンゼで「騒乱」相次ぐ、という内容の記事の一部が転載されてました。早めにキャプっておくんだった)

というわけで、26日現在、24日にセルタで少なくとも1人が撃たれて亡くなった武力弾圧は、「新华社证实四川藏族自治州骚乱(新華社が四川チベットエリアの騒乱を実証)」(記者伝媒電子報)、「四川色达两名藏人被开枪打死多人受重伤(四川のセルタでチベット人2人が発砲により死亡、多数が負傷)」(RFA普通話)などとして引用紹介されたリライト原稿ばかりになっています。

これはアレですかね、「チベット人こんなトンデモナイことをした」と中国国営新華社が脚本つくり作文してみたものの、あまりのトンデモなさに海外から(RFAまで!)半笑いで引用され晒しものになる結果となり、半日程度であわててひっこめた、ということなんでしょうか。(いや思い込みかな…、2カ所目の暴動を認めた形となったことでメンツつぶれたと方向転換して隠蔽に回ったのかな…?)

探した結果、引用リライト記事ではなく、もともとの新華社電の記事そのままの全文転載であろうと思われるものを見つけたので、こちらをここで参考訳しておきます。24日にセルタで起きたことの中国側公式見解です。チベット側からの情報「今日セルタでデモ、当局の発砲により5人死亡か?」(チベットNOW@ルンタ1月24日)と比較してお読みください。

四川甘孜(カンゼ)州で再び派出所襲撃事件発生
2012年1月25日
【新華社成都1月25日電(記者苑堅)】 1月23日に四川省甘孜蔵族自治州炉霍県(カンゼのダンゴ)で起こった公安派出所襲撃事件に引き続いて、24日、甘孜州色達県(カンゼのセルタ)で再び派出所暴力襲撃事件が発生し、警察官14人が負傷、もめごとを起こした1人が死亡、1人が負傷した。
新華社記者が色達県政府から取材したところによれば、24日午後2時40分、色達県の金馬広場に100人近い群衆が集まり、反動的スローガンを叫んでルンタをまき散らし、さらに一部はこん棒や石ころ、刃物、ガソリン瓶(=火炎瓶)などの武器を手に持ち、城関派出所を襲撃した。
この派出所のある警察官は「ならず者どもは肌身離さず身につけている火炎瓶や石ころで人民警察を攻撃し、さらに私達に銃を向けて射撃してきて、14人の警察官が重軽傷を負うに至った」と話した。
説得や殺傷性のない警察装備には効果がなかったため、警察はやむを得ず法に基づいて銃によって自衛し、率先して騒動を起こしていたならず者(不法分子)1人が死亡した。騒ぎを起こした者を解散させる過程で、不法分子1人が警棒で殴られ負傷、不法分子13人が逮捕された。
色達県政府のある職員は「負傷者は全員が速やかに救急治療を受けている。目下のところ、色達県の秩序は正常であり、社会は安定している」と述べた。
四川省チベット学研究所のチベット学専門家一飛は「色達県の今回の派出所襲撃と23日に発生した炉霍県の派出所襲撃には、同じ特徴と同じ目的を備えている。ともに計画的であり、組織的で、公然と暴力をふるって法執行機関や法律執行人員を襲撃している。このような暴力的警察襲撃行為は、いかなる国家であろうと許されるものではない」と認定した。(終)

四川甘孜州再次发生冲击派出所事件
http://bbs.china168.info/article-10348-1.html
2012-1-25 10:09
摘要: 继1月23日四川省甘孜藏族自治州炉霍县发生打砸公安派出所事件后,24日,甘孜州色达县又发生暴力冲击派出所事件,14名警察受伤,闹事者1死1伤。 新华社记者从色达县政 ...
新华社成都1月25日电(记者苑坚)继1月23日四川省甘孜藏族自治州炉霍县发生打砸公安派出所事件后,24日,甘孜州色达县又发生暴力冲击派出所事件,14名警察受伤,闹事者1死1伤。
新华社记者从色达县政府了解到,24日下午2时40分,色达县金马广场有近百人聚集,呼喊反动口号,抛撒龙达,并有部分人员手持棍棒、石块、刀具、汽油瓶等器械,冲击城关派出所。
该派出所一名警察说:“闹事人员用随身携带的汽油瓶、石块攻击民警,并向我们开枪射击,造成14名民警不同程度受伤。”
在劝说和使用非杀伤性警械无效后,警察迫不得已依法持枪自卫,1名带头闹事的不法分子死亡。在驱散闹事者的过程中,1名不法分子被警棍击伤,13名不法分子被拘捕。
色达县政府一名官员说:“所有伤员都得到了及时救治。目前色达县秩序正常,社会稳定。”
四川省藏学研究所藏学专家一飞认为:“色达县这起冲击派出所的事件和23日发生在炉霍县的事件具有共同特征、共同目标,都有预谋、有组织,公开使用暴力手段攻击执法机关、执法人员。这种暴力袭警行为,在任何一个国家都是不允许的。”(完)

…というわけで、23日のダンゴの報道で「こん棒や石ころなどの何か」だった持ち物は、後発報道では「こん棒や石ころ、刃物」にグレードアップし、25日のセルタの報道では「こん棒や石ころ、刃物、火炎瓶」とさらにバージョンアップ。警官の談話にある「肌身離さず身につけている(随身携帯的)」火炎瓶(ガソリン瓶)とはいったい何のことやら。チベット人が常に火炎瓶を持ち歩いている人々だとはオモシロすぎ。
また、軍警の一般市民への発砲に免罪符を与えるべく「ならず者が先に銃を撃って攻撃してきた」というくだりも、それまで銃など持っていなかった「暴徒」が突然発砲したことになっていて、なかなか唐突感があります。
チベット人1人の死者を除き、負傷した警察官が14人、負傷・拘束したチベット人の数もぴったり14人というのも、「引き分け」にするよう数を合わせたのか、適当に作文しているうちに同じ数を書いてしまったのか、なかなか謎めいたものがあります。

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