「天空への回廊」「最遊記」
12日からの旅行でダラムサラの「ルンタ」に持っていった小説など。
「ヒマラヤの話かな?」と表紙買いした小説。02年に出版された作品の文庫化。とはいえ02年のハードカバーでは知りませんでした。
冒頭シーンがもういきなりチョモランマ頂上です。解説を、なんかうらやましそうに夢枕獏が書いています(夢枕獏は実際にチベットのどっかを登っていてチベットをモチーフにした小説も数作あったかと)。
アメリカの人工衛星がチョモランマに落下、プラマプトラ流域が放射能汚染の危険にさらされるかと思われた、実はその人工衛星は……というストーリー。チョモランマの両側が舞台になっていて(主人公はチベット側)、チベット人、ネパール人(シェルパ)、アメリカ人、ロシア人などバラエティ豊かな登場人物群のなかで、日本人主人公(本業はカトマンズ在住の山岳ガイド)がカッコ良く活躍します。人間とのアクションもありますが、最後は自然、高度と酸素と寒さとの闘いになります。
……とはいえ、私自身は感情移入できる人物がいなくて困りました。この主人公に共感できるのは、高くて白い山をみたら登りたくなるタイプの人間か、よほど自己陶酔型性格のヒトでは(言い過ぎか)。ヒロインがまた、女ってのはなー、そんな都合のいい生き物じゃねーんだよ! とドツいてやりたくなる描かれ方でしてね~。日本人女性という設定ならまだしも、これがアメリカ人(だったかな?)というんだから「嘘でしょ~」な感じで。
あ、ストーリーは冒頭からクライマックスまでまっすぐに突き進んでいく、勢いのある(悪く言えば一本調子な)物語で、旅の一気読みにはなかなか良かったです。ダラムサラで長逗留してるバックパッカーに旅への活力をくれる本かも。日本食レストラン「ルンタ」で見かけたら、ぜひ。
個人的には、観光で行ってしまったロンブクBCを思い出し、改めて、本当にあそこからチョモランマのてっぺんまで登っていく人たちがいるんだったなあ、などと思い返したり。あの時、ロンブクゴンパの宿坊前にはヤクがたくさんつながれていて、荷を積んで峠を越えてネパールへ交商に行くんだと言っていたっけ。そのネパールへの道筋のほうが私にはロマンチックに聞こえて、そーゆーヒトはやっぱりこの小説世界に向かないのかも知れんです。
それから、他のDVDやビデオと一緒にブック・オフの袋に入っていたために勢いでリュックに突っ込んでしまい、こんなん読んでいるのを見られたらなんかちょっと恥ずかしいから途中で忘れた振りして捨てようかとも思いながら、空港でも列車でも捨てるに捨てられずダラムサラまで持ってきてしまって、日本語そのものが希少価値に思えてつい置いてきてしまった……のがやおい一歩手前系コミック「最遊記」(エニックス)1~5。寝台車の友、"天竺"でのひまつぶしにはなってくれました。
「ほお」と思ったのは、主役の1人の必殺技のキメ台詞(発動呪文)、「噢・嘛・呢・叭・咪・吽!」。
オン・マ・ン・ハツ・マ・ウン! とルビが振ってあったけど、お~、こりゃどうみても「オム・マ・ニ・パー・メ・フム!(※チベットのものごっつポピュラーな真言。オムマニペメフム。"なむあみだぶつ"みたいな語感)」じゃん(←これを書いておきたかった)。
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