2008.02.06

ジブリ小冊子「熱風」チベット特集(非売品)

Rimg0387 出勤したら、自分の机に、担当のもろもろの書類や連絡ファクスが積まれた上に、こんなものが。
 (いや「こんなもの」呼ばわりは失礼ですがスミマセン)

 スタジオジブリの小冊子「熱風」2008年1号 特集「チベット」

 所属長からの「ご参考」付箋つき。
 これはいったい……何かの暗喩? ご参考って!? などと思いつつあわあわして上司に声を掛けると、「いやぁチベットなら○○さんかと思って。でもなんでジブリがチベットなの?」
私も知りたいですー(なぜ「八王子講演全収録」が入ってるのかも! 「時輪塾」ってジブリとなにか関係が?)
 うぁぁ石濱先生が巻頭だ、メインはやっぱり長田さんだ、しかし濃いなぁ、と思いつつ、有難くいただきました。

 私って恵まれた職場……(なのか?)。

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2006.11.17

小さい母さん(アマ・チュンワ)と呼ばれて――チベット、私の故郷

Photo  ダラムサラ行き直前の10月末のこと。
 帰宅した深夜のポストに、ルンタ・プロジェクト宛の1冊の本が。事務局の看板上げてるとたまにこんな役得もありますふふふ……と中を開けると、「小さい母さん(アマ・チュンワ)と呼ばれて――チベット、私の故郷」(集英社、クンサン・ハモ著)。→bk-1
 わぁすごい、とうとうチベット人が日本語で本を出せる日が来たんだ(いや、ペマ・ギャルポ氏とか先駆者はもちろんいるんだけど)、と感激して本を開く。クンサン・ハモさんって名前は記憶にないけどペンネームかな、そりゃそうだよな、ラサ出身で親類縁者がたくさん本土にいるのなら日本で本なんか出したら差し障りあるだろうしな――と、知っているチベット人の顔を思い浮かべながらぱらぱらと内容を確認するうち、止まらなくなった。翌日も早いのに、仕事山積みなのに、少しでも寝なきゃいけないのに、明け方4時読了。布団にもぐりこんで数時間、チベットの夢を見ました。
 チベットが中国共産党統治に移っていく激動の時代に幼少を過ごし、難民としてインドに逃れ、縁あって日本へ渡ったチベット人女性(1959年ラサ生まれ、とプロフィルにはある)が、国籍を移し「外国人旅行者」としてチベット本土を再訪、長く離れ離れだった親類と再開する旅行記と随想。止まらなくなってしまったのは、故郷チベットを離れ、帰れないまま異郷で暮らすチベットの友人が私の周囲にもたくさんいるから。さまざまに複雑で揺れ動く気持ちを抱えていると思うんだけど、私の拙い英語や北京語では奥底の微妙なものまで言葉で分かち合うことはできず、ただ勝手に想像するしかなく、もしかしたら思い込みかもしれない、一方的な押し付けかもしれない、そんな自戒(自嘲かも)を抱えつつ、友人たちを思っているのでした。
 だから、チベット人がチベット人としてチベットを旅した随想録――って、ものすごく画期的だったのですよ(私には)。チベット(本土)で暮らすチベット人と、本土を長く離れた著者とのやりとりで、小さなギャップやとまどいが生まれては消えていく一つ一つのエピソードが切なくて、××××先生が里帰りしたら何を見るのだろう、××××さんが日本国籍取れたら一緒にチベット行きたいなあ、と、友人知人の顔が具体的に思い浮かんできたのでした。
 印象的だったのは、遠縁の夫婦を訪ねて食事中、外国からの来客である著者に向かって、「昔に比べたら今は生活が良くなった」と人民日報のコメントのような教科書的感想を口にした若い奥さんのエピソード。「本当にそう思っているの」とショックを受ける著者、「本心じゃないだろう」と冷静に指摘する夫、「相手がどんな人か信頼ができない間はきれいごとだけを言っておく習慣が自然に身について……」と恥じ入る若奥さん。そうなんですよこれこそチベットの(中国の)現実ですよ、私が中国に(チベット本土に)何回行ってどれだけ滞在しようと、本心をぶちまけて付き合える友人なんかできないんですよ、チベット人同士だって互いを信頼できないんですよ……といろいろ思い返していたら泣けてきて、涙が止まらなくなったのには自分でもびっくり。おい待てどうしたんだ自分。まあほら、ダラムサラ行き直前で仕事も山積みで、精神的に追い詰められていたんだと思うんだけど。
 というわけで、「チベットのことを知りたい」という人だけでなく、「チベットのことならいろいろ知ってるよ」という人にこそ、読んでほしい本だな、と思ったのでした。
         ◇
 ところでちょっとした後日談。
 ダラムサラ滞在中、「こんな本が届いてね……」という話をしたら、友人が「そんな本が出たんだ、読みたいなあ、クンサン・ハモって××××さんのペンネームだよね」。
 ええええええ
 「うそー、プロフィルにはラサ生まれって書いてあるよー! 信じて読んで感動して泣いちゃったのにー!!」
 「いや嘘はついてないんじゃない? ノンフィクションとは書いてないんでしょ?」
 ぇぇぇぇぇぇぇぇぇ
 
「やっぱり信じらんない、すっごくリアルだったのにー」
 「だから嘘は書いてなくて、本当のことなのかもよ」(←慰めてくれている)
 いやぁ真偽は分からんぞ。何より読んで良かった、いろいろ考えさせられた。でも頭の中には瞬間的に「イザヤ・ベンダサン?」「ポール・ボネ?」とか浮かんじゃって(ふ、古っ!!)。泣き損だなんて思わないからいいもん!
         ◇
 この本も、拾う神のSさんに託すことができて、来週中にはルンタ・レストランの本棚に入ることになりました。Sさんありがとうございます。ダラムサラを通り過ぎる旅人が、1人でも多く目を通してくれて、チベット人の心に触れてもらえれば、と思っています。お薦めです。

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2006.06.22

チベット 癒しの塗り絵

Nurie  絵本はすっかり子どもだけのものではなくなったけど、いま「大人のぬり絵」が人気だそうで。
 ジグソーパズルみたいに、細かい色塗り作業をこつこつと続けていって1枚を完成させて、終わった後は飾って楽しむんだそうです。癒されたり落ち着いたりするんだそうです。言われて本屋の店頭をみたら、特設コーナーもできていました。

 ……で、これはそんな1冊のチベット版。
 編集者をしてるチベ友から、「こんな企画を暖めているんだけどどう思う?」とこっそり教えてもらったのがちょっと前のこと。その後、「企画が通ったよ」と連絡があり、ついこの前、「もうすぐできるよ!」と教えてもらったんだけど、「Webに書いていい?」と尋ねる前に完成してしまいました。は、早!! (というか私がトロいんだ……ごめんなさい。)

 「癒しの塗り絵――美しい密教の仏とマンダラ」(扶桑社/監修=石濱裕美子早大助教授、タンカ=ロプサン・シャンパ絵師ほか)
 bk1→癒しのぬり絵

 チベット人は専門の訓練を受けた絵師以外、自分でてなぐさみにタンカを描く、とか、仏画をいたずら描きする、ということはしません(……と思う。自分の知る限りだけど)。
 チベット人にとって、さまざまな仏教の決まりに則って描かれた仏は、それが壁画だろうがアクリル絵の具のポスターだろうが、その瞬間から信仰の対象そのものになって、敬うべき存在になります。(だからチベット人にとっては、タンカやマンダラやダライラマ14世の肖像をTシャツにプリントしてシワシワにして着るとかありえないし、トイレに飾るとか信じられない、ってことに。)
 塗り絵の企画段階で、私が知り合いのチベット人タンカ絵師何人かに相談したのは、「線画だけのタンカはまだ“未完成品”? そういう完成度が低い状態で出版物にするのは、絵師として抵抗がある?」ってことでした。ところが意外なことに(いや、言われてみれば当たり前なんだけど)、絵師さんが一様に懸念したのはそんなことじゃなく、「塗り絵って子どもが遊ぶ遊びみたいなこと? そういう遊びで仏様を扱ってはいけない」ということでした。
 ぐりぐり色を塗って遊んだらくしゃくしゃ丸めてぽいっと放り出す、そんな扱いは決してしてはいけないものだ、と。そういう企画だったら自分は仏教の教えに帰依して仏画を描く絵師として協力できないし良くないと思う、という意見で一致していました。
 そうかそうだよなあ、とまた改めて感じ入ったことでした。
 それで「これは、子どもがいたずらして遊ぶ塗り絵じゃなくて、大人が一枚一枚丁寧に作業して、塗り終わったら大切に保存したり飾って楽しむ特別な本です。日本には写経という文化があって、ワークブックが広く浸透しています」と企画意図を説明(したのは私じゃなくて編集者O嬢ですが)、「ちゅんちゅんタンカカフェ」のシャンパ絵師が、きちんと仏典に則った描き下ろしをしてくださいました(と聞いてます)。
 (ちゅんちゅんタンカカフェさんからの案内はこちらに

 というわけで、この「癒しの塗り絵」。
 「仏教モチーフのレプリカに色をつけて『あ~癒される~。仏像ってユルくてイイわ~』」……じゃなく、まぁ少なくともチベットやチベット仏教に関心があって手に取る方には、チベット文化にとってのタンカの重みを感じながら、1枚1枚が信仰の対象となる、生命のこもったものを手にしているのだと「癒されて」いただければなー、……などと思っているのでした。
 うーまあ私がこんなことを書くまでもなく、絵師さんも製作側もきちんと分かって作っていますから、収録されているタンカと砂曼荼羅15作品はシャンパ絵師の作品はじめ典拠のきちんとした素晴らしい作品ぞろい。さらに石濱先生の解説や、その仏格に応じた真言なども添えられてます。カラー原画と、ミシン目入りで1枚ずつ切り離して彩色できる作業用ページに分かれていて、最後のカバー折り返しには「楽しみ方」や「裏面に祈願文を書いて寺院に納めることもできます」と広島のデプン・ゴマン学堂日本別院の連絡先が書いてあったりしてもう至れり尽くせり。癒されながらチベット仏教の仏の世界への基礎的知識も身につく、という、もったいなくも欲張りな1冊になっているのでした。
 (石濱先生からの案内はこちらに

 ぐだぐだ書いてしまいましたが「編集者のチベ友が本を作りました」ってことで! 店頭に並ぶのは今月末くらいだそうです!
 A4判変形56ページ・950円。問い合わせは扶桑社販売部(03-5403-8859)。

 <追記>
 月末まで実物は手に入らないだろうなと思ってたら、ここまで書いたところで裏口入手(持つべきは友)。ちょっ……うわー何これ! 綺麗! 本格的!! 千手観音菩薩とか砂曼荼羅とか、A4判型なのがもったいないよー。もっと大きな判型でじっくり眺めたり色塗ったりすれば……、って、それじゃ本物のタンカ飾ればいいじゃんってことか。なんか私の感覚ってズレてるようです。ごめんなさい。

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2006.05.28

チベット旅したつもりマップ

Cobart 「風の王国特集 チベット旅したつもりマップ」とあるのをみて、少女小説誌「Cobalt」衝動買い。
 「特集」は、「旅したつもりマップ」のほか、作者インタビューにストーリーやキャラクターのダイジェスト紹介「翠蘭&リジム 愛の軌跡」、番外編の短編小説とコミック版(連載中)掲載など。6月と7月に短編集と本編の続きが連続刊行、ドラマCDも発売間近、だそうです。
 巻数重ねて、新規読者取り込みに敷居が高くなったためのテコ入れ特集なのかもしれないけど、チベットって文字が表紙に躍ってるのはなんだかそれだけで嬉しい。
 “チベット旅したつもりマップ”、オフィシャルでは初の小説世界地図かも!? ただ、現在の国境や都市の位置との対照がまったくないので、Cobalt読者層にはちょっと現実味が薄いかも(なぜかラサだけ記載されて、ポタラ宮の写真が載ってます。あとジョカンのジョウォの写真も)。「ほんとに行って歩いてみたい」なパッカー予備軍もいると思うんだけどなー。……国境や中国省境を書いちゃうと、現在の「西蔵自治区」をはみ出しちゃって何気にヤバイから自粛してるんでしょうか(←かんぐりすぎ)。ま、ラサを首都ならぬ「主都」と表記したり、「チベットとは」の説明文にわざわざ「平凡社辞典より」と出典明記して「文責はうちじゃないもん」な姿勢が透けてみえたりして、なかなか敏感になってる印象がありました集英社。

 ところで新刊予告によると、7月刊の続編ではとうとうティツン王妃が出てくるんだそうです! どうなるんだ! ついに「チベット版大奥」の愛憎ドロドロ世界に突入かー!?(←たぶんありえません)

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2006.05.22

メイド服とダライラマ法王グラビア

Nishimura_1  朝日新聞(東京本社発行)朝刊の社会面ミニニュースコラムにチベ関係の知り合いが。いや、知り合いってだけなら驚かないんだけど、中野駅前でメイド服着てるよ!
 以前中国辺境を旅していたとかで、チベットにも何度か行きました、と、今はなき本屋「漂飄舎」で知り合いました(確か)。当時は西成に住み込んでドキュメンタリー写真を撮るかたわら、ミナミのお寺の境内でチベット本土の写真展を開いたりしてました。その後、南の島でフィールドワークするために奄美移住、本を出版したという消息を風の便りに聞いたりはしてましたが、メイド服ですか(>いや本題は共謀罪廃案PRだから)。

 <29日追記>
 これだけだと「単なる知り合いがこんなこと」って感じかなあ、チベ関連として書いちゃっていいのかなあ、と、テキスト書きかけのまま放置していたんですが、29日発売の週刊誌「サンデー毎日」をみたら、カラーグラビアにダライラマ法王の写真が。4月に開かれたカーラチャクラ法要の様子です。…って、署名をみたら西村さん!! アマラバティーに行ってたのか!
 グラビアは、法王1枚、群集1枚、パンチェンラマのリリースキャンペーンPR1枚、青空床屋で剃髪する僧侶のスナップ1枚、など。
 日本人がスポンサーになった初のカラチャクラ、などの細かいチベビアには触れずに記事と写真はごく普通。ま、そのほうがいいよね(^^; (ただ、群集写真の中央にけっこう目立って写っている人、どうも日本人のような気がしてならない^^;)

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2006.01.26

週刊文春にチベット

 「週刊文春」(2月2日号)の巻末カラーグラビアにチベット。
 「天空への階段――中国四川省甘孜県で春を待つ人々」(撮影・文 大塚雅貴)。
 カンゼいいですな。カンパかっこいいですなー。
 ……にしてもちょっとだけ悲しいのは、「甘孜」に“カンゼ”とルビが振ってあった以外はすべて漢字表記(=中国語表記)。筆者の方、チベットそのものにはあんまり関心がないのかなあ。「東チベット」ではなく「中国四川省甘孜県」、「カンゼ・ゴンパ」ではなく「甘孜寺」、「チベット人」ではなく「チベット族」。週刊文春だというのに(笑)。で、

食事は主に小麦粉にバター茶を混ぜて作る「ザンパ」というスープのようなものを飲むだけ。

だそうです。「ザンパ」はツァンパのカムなまり(カムっぽくていいよね)、「スープのような」ってほどゆるゆるに粉をケチるような貧しく厳しい生活してるんだな、普通はカユ(椀)山盛りに粉盛るもんな、ってのはいいんですが、小麦粉は……聞かないなあ。小麦粉あったらゴレ(ぱん)にしないか?
 検索したらサイトがありました→「写真家 大塚雅貴 OFFICIAL」。エジプト、雲南、サハラなど各地で撮影されてます。「チベット 天の大地」や「地球巡礼」で知られる写真家野町和嘉氏の助手出身の方だそうでした。

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2005.11.04

「風の王国 月神の爪」

kaze 東京までの往復を利用して、チベ系ライトノベルのシリーズ第5巻「風の王国 月神の爪」。
 ラノベって刊行ペース速いなあ! 7月末既刊だったらしいのを気付きませんでした。
 古代チベット吐蕃を舞台にソンツェン・ガンポの息子クンソン・クンツェンと文成公主のラブラブ政略結婚カップル、結婚から約2年、いよいよ舞台はヤルルン渓谷、さらに西の領国ツァン・プーへ。

嘘も偽りもない私を受けとめて…。ヤルルンへの道中、翠蘭はソンツェン・ガムポ大王の使者に命じられ、大王の二人の妃を連れ戻しにオンの谷へ。二人を伴いヤルルンに入った翠蘭は、大王に本物の公主かと尋ねられ、事実を語るが…。
コバルト文庫サイトの紹介文から)
詳しくは→ Amazon bk1

 <以下たぶんネタバレあり>
 ソンツェン・ガンポ出た――! ティツン妃(名前だけ)出た――! シャンシュン王国との確執が語られ、キュンルンなんて地名が出てきたりして、うふふふ、という感じです。ソンツェン・ガンポの食えない爺さんぶりはなかなか。「助平爺」とか描写されてたりして今後が思いやられますが、シャンシュンから嫁いだ第一王妃「リティクメン」と実は密かにラブラブっぽいようなシーンもあって、基本的に作者さんは夫婦の情愛を大切に思ってるんだなぁ優しいなあと思ったり。
 話のほうは、陰謀に謀反に大立ち回り、謀反制圧の裏にも思惑があって……な展開でなかなかスペクタクル。文成公主も殴られるわ吊るされるわ袋詰めにされるわの主役かつ王妃とは思えない被虐待っぷりです。ダンナより奥さんが手ひどくいたぶられてるのはジェンダー的にはどうなんだ(^^;)。ま、最初「舅に言い寄られるわ先妻に嫉妬されるわ宰相と不倫するわでチベット版『大奥』になるんじゃぁ…」なんて冗談が出てましたが、そういうドロドロより権力闘争のドロドロと国盗り物語のほうが楽しいよね。
 それにしても、助平爺ソンツェン・ガンポと老獪なツァン・プー領主スツェの爺2人の存在感が大きくて(過去になにかあったことを暗示するような互いの回想シーンも示唆的)、若きクンソン・クンツェン王食われまくりです。偉大な父親を持つと苦労するねぃ。
 ツァン・プー討伐が実際にあったかどうかは勉強不足にして知らんのですが(申し訳ない)、この流れでいくと史実どおりのシャンシュン遠征、吐谷渾との騒動、文成公主の妊娠出産にクンソン王の早世までありそう。どうするんだー。
 ところでやはり位置関係や地図の問い合わせが多いのでしょう、「あとがき」では地理に触れられているんですが、

地理の話を…、と思っていたのですが、1ページしかありませんので、とりあえずシャンシュンの位置を。7世紀の吐蕃の地図を見るとき、向かって左側のヒマラヤ山脈沿いに(中略)詳しく自分の目で見たい! とお思いの方は、山口瑞鳳先生のご著書、『チベット・下』や『吐蕃王国成立史研究』をご覧くださいませ。(中略)ちなみにツァン・プーは現在のツァン地方、シガツェからラツェから北を含む地帯、と考えていただくと、チベットの地理を知っておられる方には分かりやすいかと思います。

と見事なまでの突き放しっぷり。読者層はたぶん中高生メインだと思うんだけど、いきなり山口瑞鳳「チベット」(←定番の専門書。上下で1冊3000円くらいする)薦められたら泣くんじゃないか(わはは)。もっとも、中高生は授業で「世界史図説」とか持ってて却って歴史地図に強いのかもしれないけど。
 口絵に1枚地図をつけてくれればいいのになあ。多少脚色した「風の王国」版の架空吐蕃地図とかさ(そしたらいちいち現実のチベット想起してきゃあきゃあ騒ぐ私のよーなチベあほ読者は減ると思^^;)。いや待てよ、作者さんのその甘えを許さない姿勢に鍛えられ、中高生にして『チベット上下』読みこなした人たちが、明日のチベット研究を背負ってたつチベット学者として育つのかも。『キャプテン翼』から中田が生まれ『スラムダンク』で田伏が育ったように(真偽は知りまっせん)。
 地図に関しては「ちべビア」にスキャンをあげてますが(あまりほめられた行為ではないっすね)、ダヤンウルスさんとこの素材とか資料元に自作で作っている方もいらっしゃいました(すごい! 見やすい! わかりやすい! トラックバックもいただいていました!)→中華歴史小説ファンブログ「小芙蓉城」

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2005.10.09

絵本「ワンダーガーデン ダライ・ラマの愛の心」

1009 チベットがテーマの絵本「ワンダーガーデン ダライ・ラマの愛の心 ~老犬と仔ウサギの物語~」(藤田理麻文・絵)。
→詳細はbk1 Amazon
 日本語、英語、チベット語3言語で書かれている絵本です。チベット語の勉強にもなるかも(なるのか?)。
 藤田理麻さんは米ニューヨーク在住のアーティスト。スピリチュアル系の人で、チベット難民の子どもたちに自作の絵本を贈る「Books For Children」活動もしてる方です。私自身は名前を聞いたことがあるだけなんですが、先日「理麻さんの公式サイトに『ルンタ・プロジェクト』へのリンクがチベットサポートサイトの一番上にあるよ」と指摘されてびっくり。そうかルンタをご存知でらっしゃるのか(照)。(←あ、リンクしてあるのはもちろんダラムサラ発の公式サイトのほうです^^)
 そんで、ちょっと書いちゃうと、絵本の最後、私の本名のクレジットがちっちゃく入ってます。以前にダラムサラで撮った写真を提供させていただきました。編集の友人O嬢に「クレジット入れとくね」って言われて、「え~いやぁそんなカメラマンでもないのに」と慌てたんですが、完成した本のクレジットを実際に見るとやっぱりじわじわと嬉しい(すいません単純ゲンキンで…)。えへへ。
 いいものにしたいってO嬢はホント頑張って、編集と平行してチャリティイベントやサイン会も企画。絵本の原稿の最後の仕上げにどうしてもダラムサラへの直接コンタクトが必要になり、自分の夏休みを使って私費でダラムサラへ往復してまで完成させた絵本です。藤田理麻さんの絵と文が暖かいのはもちろんですけど、今回、形にするために見えないところで奮闘してる友人の話を聞いて、書籍なんて普段は完成したのを買って読むだけなんで作ってる人のことまで考えないだけに、素敵な作品になってよかったなあと思いました。(ところで絵本に出てくる女の子ってやっぱり作者自身の自画像なんですかね?)
 チャリティイベント(11月11日)とサイン会(11月13日、11月19日)のお知らせはこちら

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2005.06.29

「無国籍」

mukokuseki タイトルと、著者自身が無国籍(だった)という紹介に興味を持って買った本。
 しばらくそのままになってたのを、東京行きの新幹線に持ち込んでようやく読破。著者自身の体験や感情を自伝的に綴った前半部分は、引き込まれて一気に読んでしまった。
 チベット人に「チベット」という国籍はない。それで、チベットやチベット人と接していると、思わぬところで普段自分が意識してない「国籍」だとか「○○人とは何か」……なんてことを考えさせられたりする。
 「無国籍」の著者は日本生まれ。大陸出身の“外省人”だった父親が、1972年の日中国交回復(=台湾との外交断絶)の際、国籍を「中華人民共和国」と切り替えることに抵抗を感じ、「中華民国」にこだわって、家族全員で(日本政府への外国人登録上の)無国籍を選択した。まぁそれは日本の役所の書類上の扱いで、台湾って島と台湾の政府は実際に存在するわけだから、日本では日本政府が「中華民国政府」を認めないために書類上「無国籍」となるけど台湾へ行けば中華民国政府の国民として扱ってもらえる……はずが、日本で生まれて戸籍登録がなかったために、台湾入境にビザを要求される「どっちつかず」状態を強いられることに。実体験に基づくエピソードの数々を興味深く読みました。
 で、私がチベットと関わる時、無国籍とはどういう状態か、無国籍者として保障される基本的権利とは――なんて概念上の議論とは別に、「日本国外にいる『無国籍』な人はどうやったら段取りよく日本に招くことができるか」とか、日本のビザを取得する上での注意、なんてことが欲しい情報としてあったりするんだけど、この本はそういう実用的な部分とは違いました(当然ですが)。そういうノウハウはどこで身に付けたり蓄積したりできるのかなあ。
 ところでこの前、県の外国人登録者数の統計をみていたら、登録者総数約4万7000人くらいのうち、「無国籍」が確か300人くらいいたかと。「無国籍」にあるように、台湾籍の人が日本の書類の扱い上「無国籍」になっていたりするケースかもしれないし、国際結婚の非認知婚外子などもっと深刻なケースかも知れないんだけど、300人、多いのか少ないのかふうん、と考えました。
 詳しくは→ Amazon bk1

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2005.06.27

旅の指さし会話帳「チベット」

yubisashi 上京ついでに新宿「紀伊国屋」にて購入。
 既にちべ者さんiTibet@ryoheiさんが触れてますが、星泉先生とデキペマさんの「旅の指さし会話帳『チベット』」(情報センター出版局/¥1800税抜き)です。
 随所にコダワリがあっていい感じ!
 振り返れば私がチベットに関心を持った当時、一般書店で手に入るチベット語のテキストは「エキスプレス チベット語」(大学書林)のみ。いやもちろんあれはきちんとした敬語を学べるすごくいい本(とくにラサ語フェチにとって)なんだけど、まず最初の章がチベット語の子音の発音……50いくつだったか(いま手元にとっさに出てこなくて)……とそれに対応する発音表記の羅列だったかと……次が確かチベット文字の解説で…。ダイアログにたどり着く前にそこで挫折したヘタレな私…あ~。思えばあのテキストは星先生のお母様の手になるものでしたか。
 指さし会話帳のすごい所は「現地に持って行って使う」ことを前提としている点。
 だから、現地の人が読んで発音するためのチベット文字表記と、日本人が読むためのふりがな(カタカナ)のみ。チベット語の発音はチベット文字で書くしかない訳で、どんなにローマナイズしたところで「似せた音」にしかならない、だったらカタカナだって「似せた音」。って訳であとはイラストを指して意味を伝えて、耳で聞いて口に出して話せるようになりましょう、って画期的だし大切なことだよね! ああっ今チベットに向かう旅人はなんて幸せなんだろうー……あの当時にこの本があればー(←年寄りの愚痴)。
yubisashi02 主にチベット本土でユースフルな単語がまたツボを心得てて…「バター茶(チャスマ)」の隣に「バターなしの茶(チャダン※1)」があったり、「水(チュ)」だけじゃなく「湯冷まし(チュ・クタン※2)」があったり、実際にチベットを旅行しないと出てこない語彙ですよ、もう。
 さらにイラストがまたツボをおさえてて、眺めてるだけで楽しいです。「お寺の中で」なんつーマニアックな章もあるんですが(でもチベット旅行する時には必要になる)、「釈迦牟尼」「観音菩薩」「阿弥陀如来」から「パドマサンバヴァ」「ミラレパ」に至るマニアックな単語にイラストがついてて、これが眺めてるとそう見えてくる(笑)。なんでそんなことができるんだろー。かと思うと、「これはなんの像ですか(クティ・カレレ)」には指を広げて手の平を見せてる人の絵がついてて、つまり仏像なんかは指さすんじゃなくて手のひら全体で下からおしいだくように指し示すんだよ、というチベット流の礼儀も伝えてたり。唸りました。

※1 ちょっとしょっぱい塩入りのもあるのでストレートティーとは限らないから「バターなしの」に唸った。チャガモ(甘いミルルクティー)は茶館で買って飲むものだから、お招きされた家で、どうしてもチャスマがダメな人にとって必須な単語だと思う、たぶん。一般の会話本には「チャスマ」と「チャガモ」の2種類しか載ってなかったりするんだなこれが
※2 中国大陸では生水は飲めないので。チベットでも生水は飲まない方がいいと思う。硬水で腹を下すか、高原を流れるきれいそうな水でも上流に放牧地があったりするし

 「チベット入境→宿」では「チベットへ行きたい」「飛行機に乗る」「私の荷物が出てきません」あたりまでは中国語で、「ラサ」は漢字とチベット語の2種類表記、「今晩泊まれますか」からいきなりチベット語になっている(しかもなんの説明も解説もない!)のが「おおっチベットに入ったんだ!」とドラマチックでさえあります(笑)。すごくイイです。
 ちょっとアレンジしたら「国境の向こう側用」バージョンもできそう。
 「ダライラマ法王に謁見したいのですが」なんかが基本文型に加わって、映画は(指さし会話帳では「チベットの女」だけだったけど)「クンドゥン」「ザ・カップ」、流行歌手の名前も変えて(詳しくないけど)。単語には「亡命」とか「難民」とか「ニューカマー」とか「監獄」とか……あ、だんだん怖いほうに行ってしまった。
 詳しくは→ Amazon bk1

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