2012.11.17

矢島保治郎展in前橋2012

 前橋市で18日まで開かれている「生誕130年記念 上州の探検家・矢島保治郎―中國・西蔵30,000kmの旅― 小松健一作品展」に行ってきました。

 岩手花巻の多田等観展でも感じることですが、地域史や郷土史の視点から日本とチベットの関係を見上げて、チベットを扱う機会が多面的になるのはほんとに素敵なことです。カメラマンの小松健一氏が、今年2012年が矢島保治郎生誕130年、来年が没後50年となる節目に合わせ、数年前から企画されたそうでした。
(写真左が小松氏、左は矢島保治郎の長女仲子さん)Rimg0137 
 小松氏は、8年ほど前に「ある人から偶然聞いて」矢島保治郎のことを知ったそう。小松氏は岡山生まれですがお母さんが上州群馬の方で、群馬で育ったこともあって親近感を感じたのと、「群馬県人でさえ矢島保治郎をほとんど知らない。もっと広めなくては」と考えて、生誕130年に照準を絞ったとのことでした。
 (8年ほど前…。それは前橋時代の私が1人で保治郎インマイムーブメント状態だった2004年ではないですか…笑)
 2010年には仲子さんとともに成都まで行かれています。

 展示は、矢島保治郎の足跡の地をたどる紀行写真がメイン。
 「中国・西蔵30000kmの旅」と副題がつけられ、「世界無銭旅行者」を自称した冒険者としての矢島保治郎に焦点が当てられていました。
 写真は、「30,000kmの旅」と銘打つだけあって、横浜から上海、南京、北京、成都、重慶、ダルツェド、リタン、バタン、チャムドを経てラサ入り(第1次)、カルカッタ、ダージリン、カリンポン、ガントク、ヤードンを経てラサ入り(第2次)したルートをくまなく追跡。来場した人からは「私もネパールを1カ月ほどトレッキングしたのでこういう光景はなつかしいわ…」なーんて会話も交わされていて、参加者は、郷土人保治郎に興味を持つ地元の年配者のほか、写真撮影や海外旅行に興味がある中年女性らも多い印象でした。
(写真はギャラリートークの様子)Rimg0144 

 ギャラリートークの写真を見るとわかりますが、保治郎ゆかりの品々の展示は、会場中央のガラスケースのみです。そのガラスケース3つのうち1つは、小松氏がヒマラヤ各地で集めた民具や古布、仏具などで、保治郎ゆかりの品々は残り2つだけでした。
 これを十分とみるか、物足りないと見るかは……。


 さて、個人的に楽しみにしてきた、独立チベット国の品々。

Rimg0154
 ラサから送られた手紙の封筒。紋章がかっこいい、というかセンゲが可愛い。表書き(下側になっていて読めないので、隣にコピーが展示してある)は、切手が貼られた状態ではないので、多田等観の帰国時に託されたものではないかと思います(確認し忘れました)。チベット語で「ヤジマ ヤスジロウ」、その下にローマ字で「ヤジ マ ヤスジロ」。差出元は「フロム、ラサ、チベット」と読めます。Rimg0174

 生前の保治郎とノブラーが写った貴重な写真の数々は、展示会場内のパネル1枚に簡単にひとまとめに額に入っていました。Rimg0175

 2012年5月に小松氏がラサで撮影した写真。
 写真説明は「八角街の一角にあるデンパ・ノブラーの実家。デンパ家はゲルク派の開祖・ツォンガバの末裔としてチベット貴族の名家として知られている。中庭の柱などにはかつての絢爛さが残っていた」となっていました。(……)
Rimg0188

 「矢島大人」「弟 等観」と添え書きのある書。これは、多田等観が保治郎を訪ねて前橋の自宅を訪れたとき、その場で書いたもので、その時のことは、同席した仲子さんも覚えているそうです。
Rimg0182
 今回展示されていたチベット語の直筆手紙などはこれひとつだけ。(保治郎とノブラーにあてラサの両親から送られた手紙などは、スペースの関係で持ち込まなかった、とのこと。)
 書きかけのまま投函されることはなかったノブラー直筆の手紙です。
 長い半紙に墨でしたためられています。ノブラー亡き後も、保治郎はくるくると巻いて、他の手紙類と一緒にすずり箱に閉まっていたそうです。仲子さんにはその箱を「触るな」「開けるな」と厳しく言っていたそうで、仲子さんは「ダメだ、と言われると見たくなるので、こっそり開けてみた記憶があります」と話していました。
 横向きに展示されているので、読める方にも読みにくいでしょうが(私は読めません)、読める人にとっては、読みにくい以上に、筆跡、スペルの綴り、内容、言葉づかい、……すべてがなんともいえない気持ちになる手紙(の下書き)だ、とのことでした。

 以上、保治郎展レポートでした。
 (え、「それだけか」ですか。はい、蛇足がありますよ…。蛇足を描くためにここまで書きましたよ)
 「蛇足 残る謎」へ続く

 

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2011.01.22

2/5(土)18:30東京「チベタン・カルチャー・ルネサンス」

SFTJapanよりイベントのお知らせです。(以下転載)


■「チベタン・カルチャー・ルネサンス」■

 Students for a Free Tibet(SFT)が昨年から欧米各地で開催しているチベット文化再発見プログラム「Tibetan Renaissance Series」(チベタン・ルネサンス・シリーズ)を日本にも紹介することになりました。チベットの文化と芸術に焦点をあて、文学や詩、うたや音楽などの 芸術を通じて、チベットのこころを伝え、「Tibetan Cultural Resistance」(文化的抵抗活動)につなげる試みです。
 日本初開催は、SFTの本部米NYからチベット人代表や前代表を迎える豪華な布陣での開催です。
 多くの方のお越しをお待ちしています。

【概要】

  • 日時:2011年2月5日(土)18:30~21:00
  • 場所:JICA地球ひろば(東京都渋谷区広尾4-2-24)
    地下鉄日比谷線「広尾」歩2分

    大きな地図で見る
  • 主催:SFTJapan

【ゲスト】

  • Tendor_smallSFT代表
    テンジン・ドルジェさん
    来日2回目


  • Lhadonsmall SFT前代表
    ラドン・テトンさん
    初来日

  • Kate_small SFT副代表(Deputy Director)
    ケイト・ウォズナーさん
    初来日

  • Choedup ITNアジア調整員
    ツェリン・チュドゥプさん(予定)
    来日2回目

【参加費】

  • 一般¥1000(※)
  • 学生¥500
  • SFTJapanメンバー無料
  • チベット人無料
  • メンバー同行者及び支援関係者¥500

【申し込み・問い合わせ】

※当日までにメンバー加入(年会費¥1000)して無料参加するも知り合い作って同行者になって割引入場するも大歓迎ですので、お気軽に問い合わせ先メールアドレスまでご連絡下さい。


 これまでに開催された「チベタン・ルネサンス・シリーズ」の様子はこんな感じ。YouTubeの「SFTチャンネル」にたくさんアップロードされています。

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2009.01.18

1/24仙台で石濱教授のチベット史講演会

 チベット・モンゴル・満州関係史が専門で、「チベットを知るための50章」など多数の著書がある石濱裕美子・早稲田大教授の講演会が今週末、仙台で開かれます。
 東北大学の若手の歴史研究者グループが主催する勉強会なんですが、イシハマ先生から直々に
「仙台は遠いし、ごろうちゃんを置いて行けないし、これまでは断ってたけど、去年は『チベせん』とかね、東北でもチベット関連のグループができたのを聞いて、チベットに関心のある人がいるなら行って話をする甲斐もあると思って初めて行くことにしたから。誰でも参加自由だし無料だし、一般の人にも分かりやすくパワーポイント使って話すから興味のある人は誰でもどうぞ!」
とメッセージいただいてしまいました(有り難や……)。
というわけで、ご興味ある方は、ぜひ。

東北大学東北アジア研究センター共同研究
「北アジアにおける帝国統治とその遺産に関する研究」第5回研究会

  • 日時:平成21 年1 月24 日(土)13:00-17:30
  • 場所:東北大学川内北キャンパス
    川北合同研究棟4 階大会議室(436 室)
  • 内容:
    (1)講 演(13:00-14:00)
    石濱裕美子氏(早稲田大学教育・総合科学学術院教授)
    「チベット仏教世界の歴史的展開」
    (2)報 告(14:10-17:00)
    中村篤志氏(山形大学人文学部講師)(14:10-14:50)
    「清代モンゴル史研究の現状とソムをめぐる諸問題」
    田淵陽子氏(東北大学東北アジア研究センター専門研究員)(14:50-15:30)
    「『満洲国』期の対モンゴル人教育機関に関する回想録について」
    佐藤憲行氏(東北大学東北アジア研究センター専門研究員)(15:40-16:20)
    「19 世紀後期のダムノールチン地区拡大とロシア商人」
    岡 洋樹氏(東北大学東北アジア研究センター教授)(16:20-17:00)
    「人民革命期モンゴルにおける地方行政統治」
  • 聴講自由

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2008.12.01

Jigdrel(ジグディル)

 「Jigdrel」というチベット人が撮った記録映像は、10月、日本のチベタンの友人から聞いて知った。(寡聞にしてそれまで知らなかった)
 その友人は、亡命2世世代で、異郷で生まれて難民学校で育ち、ふるさとチベットを自分の目で見たことがない。
 「外国の撮影隊が作った映画はあるけど、これは、本土のチベット人が自分で撮ったところが違うんだ。中国政府はすぐに『分裂主義者の工作』とか言って、3月の抗議活動も『外国から危険分子が扇動した』なんていうけど、この映像を見れば全部ウソだって分かる。本土のチベット人が『やらなきゃ』と自分でビデオを持って旅に出て、映って話している人も、無理やりじゃなくて自分の意思で『自分はこう思います』ってカメラの前で意見を言ってるんだ」。
 説明しながら、友人の目は少し潤んでいた。
 「そして、撮影した人は2人とも中国政府に連れて行かれて行方不明なんだ」(当時。10月15日、1人は監視つきで釈放された)

 ネット公開されていた映像は英語字幕。
 「日本人に見てもらうには、日本語に訳して日本語の字幕がないと」「ある程度チベットのことを知らないと、見てもわからないかも。解説がいると思う」。一緒に映像をみた人たちの間から、その場でさまざまな意見が出た。全員が「上映する」ことを前提にしていた。「字幕加工ならできる」と手を上げる人、「英語字幕をまず日本語に直してみますね」と申し出る人。「会場探しておきますね」「チラシ作れます」……。
 実をいうと私なんか自分でできる範囲のことしか想像力が働かず、内心「えぇー、字幕なんて一般人にはムリでしょ」「ネット配信のものをどうやって加工するの」と悲観的に眺めていたので「え!? できるの」「え!? え!? それもできるの!?」と、ただ圧倒。すいません。世の中、デキる人はほんとに凄い、と感服。

 チベット語→英語→日本語と迂回すると、もしかしたら、2回訳す間に意味がズレるかもしれない。友人は「映像で話されてるチベット語は方言が強くて、難民キャンプの標準チベット語で育った自分には完全には意味が分からない」という。
 映像の冒頭、「東チベットで……」とナレーションが入っているのを手がかりに、東チベットならカム(Kham)だ、カムの言葉が分かる人に監修をお願いしよう、とカンパ(カム人)協力者探しが始まった。
 カム方言といっても地域差があり、チャムド、リタン、ギャロン、タウ、カンゼ、デチェン、ムリ……と、それぞれ言葉が違うという。(日本語でも、同じ関西弁だからといって、京都言葉のことを岸和田の人に聞いたりしないと思うし。)カムに詳しい日本人にも協力を頼んだりして、カムの中のさらにどの方言なのか確認しようとしていた10月下旬、拘束され行方不明だったこの映像の撮影協力者が釈放されたというニュースが入った。

チベット人の「本音」描いたドキュメンタリー映画の制作協力者、7か月ぶりに釈放(AFP-BBニュース日本語版 2008年10月21日)
http://www.afpbb.com/article/politics/2530617/3450448?blog=alcom

 「甘粛省のラブラン寺に戻り」……。
 って、カムじゃないじゃん、アムドじゃん!! だから(アムドの)西寧拘置所に拘留されていたのか。そういうことか。
 すぐにアムド出身の知り合いに聞く。
 「Jigdrelって知ってる?」「知ってるよ」「インタビューで話してた言葉、聞き取れた? 英語なくても分かるの?」「(笑って)当たり前じゃないか。自分の言葉だよ」

 生まれて一度も見たことのない、足を踏み入れたことのないふるさとの人たちが撮影した映像を何度も何度も繰り返し見て、ふるさとへの言い尽くせない思いを胸に「これを日本人に見てほしい」と訴えたチベットの友人。
 その土地で生まれ育ち、温かい思い出も嫌な記憶もすべて抱え、友人も親類も残したまま離れざるを得ず、(現在の情勢では)再び戻って故郷で暮らすことは絶望的ななか、遠く離れた日本で、インターネット越しの映像で、現状を訴えるふるさとの言葉を聞いたチベットの友人――。
 なんだか泣けてきた。

 こうしてさまざまな人の協力で実現した「Jigdrel」日本語字幕版。
 ほんと私は横から成功を祈りつつ己のスキルのなさを実感してただけで何も能力を提供できなかったけど、年内に上映が実現することになって勝手に嬉しい。
 地元でもチベせんに機会を作ってもらった。ゲストなし、映像見るだけの地味イベントですが、経費かけないぶん値段もそこそこなので(無料にしないのは余剰分を「Filming for Tibet」に寄付するためです)、1人でも多くの参加があれば、と思ってます。

【東京上映会】
日時: 2008年12月6日(土)午後7時
場所: 大久保地域センター4階多目的ホール
    (東京都新宿区大久保2-12-7)
参加費: 1000円
予約: SFT日本(予約専用) sft_jp_move@yahoo.co.jp

【仙台上映会】
日時: 2008年12月7日(日)午後2時
場所: みやぎ婦人会館5階第2会議室
    仙台市青葉区錦町1-1-20
参加費:500円/予約不要
詳細: http://www.tibesen.com/


(以下転載)

チベットの「いま」を伝えるドキュメンタリー
「Jigdrel(ジグディル)― LEAVING FEAR BEHIND」
   


2008年、チベット。20人がカメラの前で恐れることなく本当の気持ちを語った。フィルムは極秘にチベットから持ち出され、撮影した青年と僧侶は中国政府に逮捕された――。
近づく北京五輪に沸き立つ中国の裏側で、チベット人は何を思い、何を感じ、どう生きているのかを世界に伝える証言映像。

Filming for Tibet(スイス)の協力でStudents for a Free TIBET Japan(SFT日本)が日本語訳と字幕制作を行ったものです。

■日時: 2008年12月6日(土)午後7時
■場所: 大久保地域センター4階多目的ホール
    (東京都新宿区大久保2-12-7)
■ゲスト:ダライラマ法王日本代表部事務所
     代表 ラクパ・ツォコ氏
■参加費:1000円
■定員:100人
■申し込み・問い合わせ:SFT日本事務局
 参加申し込み専用 sft_jp_move@yahoo.co.jp
 参加予約以外の問い合わせ sftjapan2008@gmail.com
■主催:Students for a Free TIBET Japan(SFT 日本)    
■協力:(社)アムネスティ・インターナショナル日本・チベットチーム

【ドキュメンタリー「LEAVING FEAR BEHIND」について】

2007年10月から2008年3月にかけ、チベット東北部アムド地方在住の農民トンドゥプ・ワンチェン(34歳)と僧侶ジグメ・ギャツオ(39歳)の2人が、チベット各地で極秘にインタビュー取材したVTRを、トンドゥプの従兄弟であるスイス在住のギャルジョン・ツェリンが編集し、25分のネットムービーとして公開した。チベット語原題は「Jigdrel(ジグデル)」(=恐怖を乗り越える)。日々の社会的抑圧や政治的迫害を感じながら生活するチベット本土のチベット人が、北京五輪についてどう感じているのか、置かれている政治的状況をどうに考えているのか、強制移住や中国政府による資源収奪や教育・文化面での抑圧の実態を、「恐怖を乗り越えて」カメラの前で赤裸々に語った、チベットの「いま」を伝える貴重なインタビュー映像である。

取材した2人は2008年3月にラサからチベット各地に広がった騒乱の直後、相次いで逮捕された。ジグメ・ギャツオは過酷な拷問と虐待の後に2008年10月15日に仮釈放されたものの、現在も厳しい監視下に置かれている。トンドゥプ・ワンチェンの行方はいまもわかっておらず、政治的な理由から拘束されている多くのチベット人とともに安否が懸念されている。

LEAVING FEAR BEHIND公式サイト
http://www.leavingfearbehind.com/

(東京・仙台以降の各地の上映会予定は→SFT日本の「"LEAVING FEAR BEHIND"「恐怖を乗り越えて」特設ページ」へ)

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2008.11.26

私の見たチベット 暮らしと文化

Rimg0320 地元で「チベせん」主催イベント。
 渡辺一枝さんを迎えて講演「私の見たチベット 暮らしと文化」。しんみりと会場が一体になる語り口に、来ていただいて、じかにお話を伺えてよかった、としみじみ感じた2時間でした。

 ものすごく意外だったことに、一枝さん、仙台での講演会は初めてとのこと。「中学校の修学旅行以来です」とおっしゃられて、こちらが驚きました。
 というのも、もともとこまやかな季節感あふれるエッセーを慕うファンや平和を願う気持ちに共鳴する人の多い方で、チベット関係以外での講演活動も多く、私個人は、仙台に来る前の群馬では2度ばかり、一枝さんのトークショーがあったことを後で知り(確かうち1回はミニコミ誌を出してる地元広告会社の主催だった)、「しまったもっとちゃんと情報収集していればぁぁ」と悔やんだ経験もあったので。仮にも文学都市を標榜する人口100万人の仙台で講演会がなかったとはちょっと信じられず。

 開催レポートはチベせん代表のブログに譲って、懇親会も終わった2次会ではスタッフの大反省会。
 「いいお話だったっス……もっとたくさん人呼べたらよかったッス……」
 「だろ? そうだよなぁ? もったいねぇよなあ!!」

 足を運んでくださった方々はすっごく真剣で会場の雰囲気はとっても良かったし、金で数を競う政治集会とか労働組合が動員をかけるようなものとは違うので、人数の多寡に本質的な意味はない……んだけど、お話が素晴らしかっただけに余計に、満員御礼とはいかなかった、はるばる一枝さんに来ていただいて、たくさんの人に聞いてほしい話がもったいなかった……という気持ちはなんとなく全員が共有したまま夜はふけるのでした。
 「チベットって最近よく聞くけど何なの?」的な、ちょっと前までのノリ(社会的関心、に言い換えてもいいかも)はなかったかも。
 準備や呼びかけや告知や周知徹底についての個人的力不足は第一にあるとして、ただこの9ヶ月ばかりは、それを超えた何かに振り回されてきたので、今回はそうじゃなかった……ということを考えると、社会の関心が薄れたのか、認知度が上がって新鮮味がなくなった(チベットお腹いっぱい、みたいな)のか、センセーショナルな関心を呼びそうなビビッドなトピック(ラサで暴動に巻き込まれましたあ、とか、チベット代表者会議の内幕を話しますう、とか……?)でないと人は動かないのか、とか……。いろいろひとりで思いはとんで、ある事象に対する関心のあり方とか、チベットを考えるイベントのあり方とか、これからチベットはどこに行くんだろうなんても考えてみましたが、そんなの分かんないし、考えたって仕方ないことだと思えてきたので、やめます。

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2008.05.09

5/23にチベット医学講座/サイクロン

 ビルマ(ミャンマー)の人と知り合って、ちょっと話した。
 初対面の私に、いてもたってもいられない、というせっぱ詰まった声音で「今必要なのは食料と医薬品です。命がかかってます。軍事政権を利するとか建前や理屈でなく、一刻も早く人道支援を」と、最後は泣き出してしまい、会話にならなかった。
 未曾有の災害、膨大な数と言われる犠牲者、閉め出される外国メディア、伝わらない現地情報……。去年9月の僧侶の抗議行動(取材中の日本人フォトジャーナリストが殺害された)の当時、周囲のチベ友は「チベットを思い出して涙が出た」とか言っていた。たぶん、ここ2ヶ月のチベット報道の洪水に、ビルマにかかわる人たちは、あるいはビルマを思い出していたのかも――と考えたり。
 政治の壁のために、支援物資が届かないとか治療が受けられないとか食料が受け取れないとか、実際何が起きているのかが外に伝わらないとか……考えると暗澹とした気持ちになる。「助けて」と言う声さえ届かないなんて状況は、やっぱりおかしい。ビルマ(ミャンマー)も、チベットも。(と思考回路はチベットに戻る……すんません)


 ダラムサラのメンツィカンで研修医となったアムチ(チベット医学博士)の小川さんから、講演会の案内をもらいました。「オープンセンス」の主催事業です。

「チベット医学講座 一人一人が主人公」
【講師】チベット医学研修医 小川康
【日時】5月23日(金)19:00~21:00
【受講料】3500円またはオープンセンスチケット1枚
【場所】東日本橋 リバース2階ホール
  http://opensense.jp/studio/rebirth/access.html
 インドのダラムサラのチベット亡命政府にあるメンツィーカン(チベット医学暦法学大学)にチベット圏以外の外国人として初めて合格し、2007年チベット医(アムチ)となった小川さん……。薬剤師、薬草会社社員、自然観察インストラクターなど色んな体験を経て、いまチベット医学の道を歩まれています。ユニークな体験のなかから チベット医学やヒマラヤの自然の話また実際にヒマラヤから持っていただいた薬草に触れながら薬草の話などを聞かせていただきます。
 「草に親しみ、薬の起源を体験し自分で感じ考えることから 一人一人が医学や薬学を自分の手に取り戻してゆく手助けをしたい」「草を楽しむと書いて薬という漢字ができました。まずはそこからはじめてみませんか?」
http://www.opensense.jp/education/workshop/
OgawaYasushi20080523.html

 申し込みは公式サイトからどうぞ。


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2008.05.01

5月1日から写真展「天空の人びと」

 チベットの写真展の紹介をいただきました。
 千駄木ってなんかいい場所ですよねえ。ネーレンカンの子供たちの描いた絵もいくつか貼られているそうです。近くにお立ち寄りの際はぜひ。

旅のチベット写真展 ~天空の人びと~

  • 期間:2008年5月1日~5月31日
  • 場所:「Bar B101」
    文京区千駄木3-44-9パレドール千駄木Ⅱ-B1F
    (1Fは菓子工房まぁる さん)
    tel:03-5814-0345
    営業時間:20:00-24:00
    ※5月3日~5日は12:00-24:00の営業
    定休日なし/チャージなし/ドリンク・フード¥500~
    最寄り駅:千代田線 千駄木駅(2出口)
    JR線 西日暮里駅・日暮里駅(北口)

旅行者の目に映ったチベットとチベット文化圏の写真展です。
チベット人シェフが作るモモやバター茶、カプセなどのチベット料理、またお香などの雑貨もご用意しております。
在日チベット人ゲストも予定しておりますので、是非お越しください。
連絡先:シンポドゥ会

 連絡先団体名の「シンポドゥ」はチベット語で「おいしい」。わははは、いい名前です。私も入りたいなー、集まりの際はおいしい料理必須で。メインテーマはチベット食べ歩きとか。
 ただ、イベント、どなたの写真か…が分かりませんが、旅行者が数人で写真を持ち寄った、ということなのかもしれません。チベット本土かな、文化圏とあるからラダックシッキムも入るのかな。チベット人シェフ、ってことは「BarB101」でもともとチベット人が働いているってこと!? なんか期待が高まるイベントです。


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2008.04.29

ダラムサラより4/29

 ダラムサラの「チベットNOW@ルンタ」更新。

 4月25日までの犠牲者数、負傷者数、逮捕者数について
 すべての情報源を比較検討し、これらの数字の根拠、細かい情報を分析総合した結果、我々は死亡者数203名、負傷者数約1000人、現在も監獄に囚われている者5715人とする。
http://blog.livedoor.jp/rftibet/archives/50994041.html

 その他、オリンピック聖火リレーのチベット高原通過についてのプレスリリース日本語訳も。素早い情報に頭下がります。

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2008.04.26

長野聖火リレーでアピール

 腰痛と睡眠不足で疲労困憊のうらるんたです。
 いろいろあったけどなんとかできて良かった。最後、友人と振り返って思い起こしてたら泣けてきてしまいました。


Nagano01 早朝、「国境なき記者団」に激励されるチベット人たち。ツェリンさんもがっちり握手されてました。チベット人側もちゃんと用意していて、カターを贈ってるのが素敵。

Nagano02 善光寺では、境内に入ったあと、用意してきたお経を読み上げ、ツェーメーユンテンを詠唱しました。私は気づかなかったんですが、最初、警備の人が制止しようとしたのを、Nagano03善光寺のお坊さんが「これはお経だからいいんです」ととどめて下さり、お経がそのまま続けられたんだそうです。
 最初ざわざわしていた周囲の参拝客や見物人や取材のマスコミ関係者らも、お経が進むにつれしんとしてチベット人の声に聞き入り、取り巻いた日本人も自然に合掌し、境内がしいんと静粛になったのがとても印象的でした。
 沿道の小競り合いばかりが報じられたなか、少しだけ記事になってました。

 約30人の在日チベット人も境内で「ダライ・ラマがつくったチベットに平和が訪れますように」とチベット語で歌った。在日チベット人の男性カルテさん(34)は「多くの人が一緒に祈ってくれ胸がいっぱいだ。これから人権や宗教についてアピールしていきたい」と話した。
http://www.asahi.com/national/update/
0426/TKY200804260177.html

 カルテさんって誰だよ怪しいな(笑)とかありますが(「Kaldenさん」が聞き取れなくてカルテになっちゃったんでしょうね)、ツェーメーユンテンの詞(詩)の訳はここ
 この後あった善光寺での追悼法要(SFT日本とチベット問題を考える長野の会が施主になった)もすばらしかったです(事前申請の報道関係者以外撮影不許可だったので写真はなし)。般若心経のあと読み上げられる犠牲者の名前に、思わずこみあげてくるものがありました。そういえば、チベット人名の一覧をカタカナ表記に直したのはT嬢、中国側報道の犠牲者名簿の読みは私。厳粛な気持ちになりながら、この一端に加わらせていただいたことに感謝したのでした。


Nagano04 法要を終えて外に出ると、目に映ったのはウーシンホンチー(五星紅旗)の真っ赤な大波。うっわ~、これほどとは!
 「30人しかいないんだから、できるだけ一緒に行動しよう」と決めたチベット人たちの判断は正しかった。
 待ちかまえていた(?)赤い旗の群衆から、「うーしょちゅき!」「うーしょちゅき!」コールを浴びせられて不意打ちにビックリ。移動する列に追いすがり、ホンチー振って嘘つきコールを続ける。もしかして自分たちの政府を批判している?(んなわけないわなぁ)Nagano05
 右画像は「ホントのチベット 知ってますかーぁ!」と詰め寄る中国人。詰め寄ってる相手が誰か知っての行動か(笑)(注・左は牧野聖修元衆院議員)
 「ミナさーん ホントのチベット来てくたさいね 鉄道もとおたし 景色きれいよ 誰も苦しんでない 幸せね」
 チベット人に、言うか、それを。周囲の日本人から「行ったよ!」「鉄道いらない! 自由ほしい!」と突っ込まれてましたが。
 列後方の知り合いは「アルバイト! アルバイト!」とののしられたとのこと。「意味分からん」とぼやいていた。雇用機会均等を訴えて……ではなく(笑)、動員された中国人留学生の間では、集まったチベットサポーター派の日本人は金をもらって長野に来ているんだという風評が出回っていたのかも(そんな金がいったいどこから・笑)。
 まぁ、日本人側にも、数千円の安ツアー参加呼びかけを「○千円の日当が出る」と誤読して批判していた人もいたし、双方、相手を悪く想像する時に思いつくことは一緒、つーことか。
Magano04  左写真、「チベット 知らないくせに!」「ナニも知らないくせに!」と叫びながら追いすがってきた中国人女性。知り合いのチベタンが「アイノウチベット! アイム チベタン!」と叫び返す。
 「カミング フロム チベット!?」
 知り合い、一瞬詰まる。彼は2世で、ネパール生まれだ。
 一拍おいて、彼女が吐き捨てる。
 「にしぇモノ!」
 ちょっと待て、なんでチベット人の彼がチベットで生まれることができなかったと思ってんだよ! それをニセモノ呼ばわりって、どんだけひどいんだ!?

 「Ni是Shenme地方的?」(どこから来たの?)
 「我自己来」(自分で来たのよ)
 「中国Shenme地方的?」(中国のどこから来たの?)
 「我是北大過来的」(北京大学出身よ)
 「那応該不錯ba」(すごいじゃない)
 「フン」(※ちょっと喜ぶ)
 「去過西蔵ma?」(チベット行ったことある?)
 「……」
 「有蔵族朋友ma?」(チベット人の友達いる?)
聞いたら、目をむいて
 「ni他mennei辺派的了!!」(あんた、あっち側なんでしょ!!)
と叫んで駆け去った。
 “チベット知らないくせに”はどっちだよ!!


 「ウーソつき! ダライラマ、ウーソつき!」
 「共産党こそウソつきだ!!」
 叫び返す声に振り返った。
 早朝、「ええっ、来ちゃったの」と驚く私に、指を1本立てて「ずっと黙って、カメラに映らないようにするから」と薄く笑った知り合いのチベタンだった。
 本当は一番言いたいことがあるけど前に出られない、本土を知る在日チベタンのひとり。しばらく姿を見なかった。辛いけど今目立つことはできない、チベット本土にいる人たちに何か起きるといけないから、と言っていたと人づてに聞いた。本人がどんな経験をしたか、なにを見聞きしてきたか、親戚がどんな目に遭ったか、3月以降に知り合いに何が起きたか――そんなことも聞いていた。
 だから今朝、顔を見た時は驚いた。どれだけの迷いとか決意とか覚悟をして長野に来ることにしたか、想像すると切なかった。「チベット人、1人でも多い方がいいでしょ」。……そうかもしれないけど。全員来たって100人もいないんだよ、それが20人以上来たってすごいことだよ。でも、中国人の人数からしたら、笑っちゃうような数なんだよ……。
 そのチベタンに、なんてことを言うわけ? 誰が「嘘つき」だって? 
 「共産党こそ嘘つきだ!」というその言葉の、血を吐くような重みを、中国人留学生たちはどれだけ知ってるんだろうか? どれだけ伝わったんだろうか?
 泣けてきてしまった。


Nagano08  終点の若里公園。
 300人くらいはいたかなあ。チベット国旗こんなに見たことははい、と思うくらい壮観。

 実をいうと自分は、「チベット旗持って長野に集合!!」的な不特定多数への無差別呼び掛けにあまり同調できないでいまして。重要なのは訴えたいことがきちんと伝わるかどうかだ、人数の多寡はどうでもいい、数を競ってるんじゃなくて問題は質だ、数を頼んでファッション的にアピールしたい人が入り込んで何かトラブル起きても全部一緒くたに「チベット支援者」ってされちゃうし……などと考えていたものではありましたが。

Nagano07  公園の隅から見ていると、もう在日チベット人は全員が集まり、日本人支援者も知っている顔はもうそろったと思うのに、まだ公園の入り口のほうで雪山獅子旗が揺れているのが見えて、「中国、加油!」に混じって「フリー・チベット!」コールが聞こえてくる。若里公園の芝生広場がいっぱいになって、そろそろ途切れるかな、と思ってもまだ続いてる。

Nagano06  チベット人、嬉しいだろうなあ。
 自分たちは30人にも足りなくて、中国人が3000人も5000人もいる中に放り込まれて、「うそつき」とか「ニセモノ」とかひどいこといっぱい言われる中を歩かなきゃいけなくて、それはそのまま人口13億の中国のなかに450万人(国外にあと150万人)しかいないチベットの状況でもあるわけなんだけど、でも、自分たち以外にも雪山獅子旗がはためいているのがたくさん見えて、どこまで歩いてもまだ揺れていて、旗ってパワーあるよね、旗幟鮮明ってよく言ったもんだよ、見えるだけで「あなたの味方です」っていう強烈なメッセージなんだもん。Nagano09
 もう泣けてくるよ。
 中国人には本当にひどいこと言われてかわいそうだったけど、よかったなあ、せめて沿道にチベット旗がいっぱいあって、本当によかったなあ、と思ったのでした。


 ダラムサラの「チベットNOW@ルンタ」更新。

 24日付ダライラマ法王<法友へのアピール>
 現在の危機的な状況において、未だに続く残忍な弾圧行為を直ちに阻止し、拘留されているすべてのチベット人を釈放し、怪我人の緊急医療処置を提供するように、中国政府に要請していただくよう、皆さんすべてに心からお願いします。

 米ニューヨークで24日出されたコメントの日本語訳です。雨に濡れてほとんど機能不全だった集会、本来ならこういう場所で読み上げて、多くの人に知ってもらいたかった。力不足でごめんなさい。

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2008.04.25

チベット文化交流会/法王ご帰還

 チベットNOW@ルンタ更新。

 26日午後4時ダライラマ法王ダラムサラにご帰宅される。
 ダライラマ法王ダラムサラにお戻りになる

 ハンスト中のチベット人たちを見舞ってる様子がいいです。

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